担当:鳥山穣
今回は、先日、東京駅の前、オアゾ丸の内で開かれた
「ハンセン病を考えることは人間を考えること」という
写真展を紹介します。
ハンセン病は、らい菌という菌による感染症で
感染力は強くないが、治療が遅れると、たとえ治っても
身体的な後遺症につながり、そのため歴史的に
差別される対象となってきました。
日本でも、特に憲法違反とされる隔離政策が
20年前まで続いていました。
現在は、ほとんど日本では発症する人がおらず、
治療法も確立しています。
ただ、世界には今もこの病気に苦しめられている人がいます。
写真展では、日本財団の写真家、富永夏子さんが撮影した、
世界各国のハンセン病患者や、居住施設などの写真が
壁一面に展示してありました。
後遺症に苦しむ人、施設に家族で暮らす人など、
様々な写真の前で富永さんは
「こういったオープンスペースで開催しているので
初めてハンセン病の写真を見る方も多い。
そういった方達にも伝わるような構成にした」と
話していました。
富永さんはこれまで世界60カ国以上で撮影してきたのですが
ハンセン病患者に会うには、
市街地から遠い場所に行かなければならないことも多く、
移動だけで何日もかかったこともあるそうです。
今回の写真展は、写真を通じて世界や日本の実態を知ってもらい、
考えるきっかけにしてほしいとして開かれました。
会場は大変人通りの多い広場で、
ちょうど昼休みだったのでふらっと見に来た人が多かったです。
今回の写真展は富永さんの他に、
2人の写真家も協力して開催しました。
その一人、八重樫信之さんは
全国の療養所に住む回復者の撮影を続けてきた人です。
八重樫さんは
「写真を撮られるというのは皆さん大変なこと。
自分を隠して生きてきた。それが表沙汰になるということは
非常に抵抗がある。お互い信頼関係を作りながら
撮るということを考えてやってきた。
やはり記録として残しておかないと
結局亡くなった後に忘れられていく」と話しています。
八重樫さんは今回、日本の回復者15人の写真を展示しており
中には、もう亡くなってしまった方もいますが、
一枚一枚「この人はこういう人だった」と
丁寧に説明してくれました。
八重樫さんは「ハンセン病首都圏市民の会」の会員として
支援活動もしています。
自身が撮影を続けながら支援をしている東村山市の療養所、
多摩全生園については
「20年関わってきてずいぶん変わった。
若い人たちもずいぶん療養所に来るようになった。
いまやっている支援活動を今後もやっていきたい」と話しています。
もう一人の写真家、黒崎彰さんは
多摩全生園の撮影を続ける中で出会った、
入所者の故・山下道輔さんの写真を展示していました。
山下さんは治った後、後遺症に悩まされながら、
全国の療養所などから膨大な量の歴史的な資料を集め、
保存につとめた人です。
山下さんの笑顔が印象的な写真の前で、
黒崎さんは
「多摩全生園の変遷をずっと撮り続けています。
写真を通して、東京に療養所があったということを
知って欲しい」と話していました。
多磨全生園は東京都東村山市にあり、
入所者等のハンセン病の後遺症や合併症、
高齢化に伴う体調の変化などに対応した診療が行われています。
隣接している国立ハンセン病資料館には、
山下さんが集めた資料や、生活用具の実物などが
数多く展示されていて、無料で見学できます。
西武線の清瀬駅や久米川駅からバスで行けます。
今回取材した写真展はこの後3月1日〜5日に
大阪の京橋駅そばにあるツイン21アトリウムで
3月9日〜13日に福岡の天神駅前にある
イムズプラザでも開催します。入場は無料です。
どちらも開催時間は11:00〜19:00です。
関連情報・お問い合わせ先
http://kodomoshokudou-network.com