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認知症になっても住み慣れた地域で暮らすための取り組み
放送日:2015年12月12日
担当:楠葉絵美
今回は『認知症』についてです。
認知症患者は年々増加していて、厚生労働省によると、
今から10年後の2025年には、2012年現在の462万人から
約700万人にまでのぼると予想されています。
これは高齢者の5人に1人が認知症になるという計算です。
誰もがなる可能性がある認知症。
もし認知症になっても、変わらず住み慣れた家で町で暮らせたら良いですよね。
先日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで
「認知症と共に地域で暮らす」というシンポジウムが開かれました。
シンポジウムで講演をしていたのは
ベルギーのNPO法人フォトン代表 バルト・デルトゥールさんです。
ベルギーのブルージュという町では、
認知症になってもほとんどの人が、そのまま地域で生活しているんです。
バルトさんは約20年かけて認知症患者と暮らす町作りを行ってきました。
ブルージュという町は
ベルギーの西フランダースにある観光地で、人口が12万人。
2300人の認知症患者がいて、1人暮らしも多いんですが、
このうち80%の人が自宅で生活をしています。
日本でもそんな町作りを目指そうと、
今年2月に公益財団法人フォトンジャパンフレンドが立ち上がりました。
代表の岡田京子さんは
実際にベルギーに行ってボランティアを見て驚いたそうです。
「例えば、お茶を入れて飲むのが好きな方がいらしたら
お茶を入れて飲むんですけど、洗うところまではしない、
ピアノを弾くのが上手な方はピアノだけをする、
お掃除をお手伝いしたりそういう業務はヘルパーの業務、
ボランティアをされる方を尊重されるそういう仕組みがちゃんと出来てました。」
ボランティアとヘルパーの役割分担がしっかりしているんです。
例えば、朝8時から10時までヘルパーの方が朝食の用意や掃除・洗濯を手伝う、
10時にボランティアの方と入れ替わって、お茶を飲んだり編み物をしたり、
また2時間ほどでヘルパーの方がお昼ご飯の手伝いに来る、
1人暮らしの人には夜も泊まりで見守ってくれるボランティアもいます。
それぞれ自分の役割だけを行いながら、上手く1日のバランスを取っています。
1人の認知症患者に対して何人もの人が関わっているんです。
(認知症患者は同じ人が来る方が安心するので、
何人かの同じメンバーで担当します。)
またボランティアには
日本円で時給約325円を支払うため、責任感も芽生えます。
やりたい人は誰でも出来るというわけではなく、面接をして選び、
何回か研修をしてヘルパーとほぼ同じぐらいのレベルの教育を受けます。
更に、ボランティアと認知症の専門医が月に1度集まって
楽しかったことや辛かったことなどの報告会を行うなど充実しているので
遠くに暮らす家族も安心して任せられるそうです。
こうしたベルギー・ブルージュでの成功例について、
シンポジウムに来ていた人に聞きました。
「男性:明日は我が身だなという、日本とベルギーのボランティアの質が違うと、
誰でも簡単に出来るようなボランティアではないという風に感じましたね。」
女性:やっぱりお国柄があったりしますので、
すぐ同じことが出来るかなっていうのはありますけど、
真似出来ることは真似をするっていうので良いんじゃないかなって思います。」
確かに、町の人口12万人と1億2000万人では
そのまま同じ仕組みで上手くいく、というわけにはいかないかもしれません。
しかし、代表の岡田さんは日本ならではのやり方があると話しています。
「日本にはお互い様とかお陰様とか助け合う気持ちがとってもある、
そういう国民文化を持ってるんじゃないかなと思ってるんです。
まずは身近な自治会の皆さんとも相談し合いながらやっていきたいです。」
昔はお隣さんに荷物を預かってもらったり、
足りないものを借りたり、
お互い様は多かったですよね。
ブルージュでは、
ボランティアだけではなく、
町のスーパーや薬局、駅員やご近所さんも認知症患者に協力的だそうです。
(協力する家や店にはわかりやすくするためロゴマークを貼り、
町のいたるところに認知症ガイドブックも置いてあり、
誰もが協力しやすくなっている。)
同じものを何度も買いに来たらさりげなく止めたり、
万が一行方不明になっても1時間で見つかるよう
交通機関と警察の連携がとれています。
日本では今年の2月に始めたばかりなので、
まだ成果はあがっていないということですが、
フォトンジャパンフレンドのある埼玉県所沢市では、
地元の自治会と協力し、2ヶ月に1度集まって、
認知症の専門医を含め勉強会を行っています。
岡田さんは、こうした活動を徐々に隣の町、隣の町と広げて
日本全体に広げたいと話していました。
これからの日本のためにも、
認知症になっても変わらず暮らしていける町作りが
日本の文化や実情に合った形で広がっていくと良いなと思いました。
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