担当:崎山敏也
東京・墨田区に、皮革、「かわ」をなめす産業で全国をリードしてきた、そして、油脂に関わる産業も盛んな「木下川(きねがわ)地区」があります。10月17日、この「きねがわ」地区を歩いて回ろう、というスタンプラリーが行なわれたので、崎山記者が取材しました。
回るのは、○2003年に廃校になった「木下川小学校」の人権教育と地域の産業について学べる「産業・教育資料室きねがわ」。○東京都立皮革技術センター。○人権啓発事業の起点で、様々な地域活動が行なわれている墨田区の「社会福祉会館」、の3箇所です。
ただ回るだけでなく、楽しく学べる工夫もしてあって、例えば、社会福祉会館では、革製品の素材となる牛の皮を使った、犬のキーホルダー作りに中高年から小学生までが、挑戦していました。皮が濡れると柔らかくなり、乾くと固まる性質を利用したものです。
「社会福祉会館」ではこのほか、地域のサークルの活動や人権啓発の展示。
「都立皮革技術センター」はこの日が、年に1度の施設公開です。「皮なめし」の機械の現物をみながらの説明や、革製品作り体験がありました。
崎山記者も参加したのですが、街中にもチェックポイントがあって、地元の人たちがスタンプを押してくれます。3つの施設だけでなく、皮革と油脂の業界の組合、地元の町会も協力している、街をあげての試みなんです。
スタンプラリーを終えて、終点の「社会福祉会館」に戻ってきた人に話を聞きました。小さい子供を連れたお母さんは「いろいろ体験もできて、スタンプラリーで景品ももらえて、すごい楽しかったです。小学生の上の子がいるんですけど、体験させたかったです」と話していました。墨田区内から来たという中年の女性は「犬の皮細工。それと巾着もね、皮細工で作ったんです。歩くには最高だったよね。知らない道だったし」と散歩を楽しんだようです。地元の中年の女性二人連れは、「産業・教育資料室きねがわ」について、「なつかしいものばっかりでしたねえ。旦那や自分の子供が通ってますから。ああいうものが残っていると忘れかけても、思い出します」と話していました。
「きねがわ(木下川)」地区が皮革産業の街になったのは明治の中ごろです。東京の都市化と共に、現在の浅草付近から追い出される形でした。昭和の始めには再び移転を迫られましたが、住民の力で押し返したそうです。
最盛期より、かなり工場の数も減りましたが、現在でも、革製品の素材としての「豚の皮」は、日本のほとんどをこの地区が供給しています。
また、皮なめしの副産物である、油やゼラチンは、石鹸や食品、化粧品、肥料など様々なものの原料になって、私たちの生活を支えています。
木下川小学校で教え、「産業・教育資料室きねがわ」の設立に関わった岩田明夫さんは「ここには基本的に人権教育をつちかってきた木下川学校があって、その中味を伝えていくのに、産業を抜きにして人権教育は語れない」と話していました。資料室には昔使われていた、皮なめしの道具の実物とか、在校生の文集「きねがわの子供」も全てそろっていて、街、産業、人権教育の歴史を学ぶことができます。
「産業・教育資料室きねがわ」は最寄り駅が京成の「八広」。水曜日と日曜日が休みです。
団体の方は、03−3617−9004に問い合わせください。
関連情報・お問い合わせ先
- 産業・教育資料室きねがわ
http://kinegawa.web.fc2.com/