担当:進藤誠人
『いのちの電話』は、自殺を考えるほどの深刻な悩みを持った人
などからの電話を受け付け、その話を聞いて「ともに生きていこう」と
呼びかけるボランティア活動です。
1971年に東京に創設され、現在は全国に電話の窓口があって
東京の事務局では、年中無休で24時間、受け付けています。
その電話相談の内容は様々です。
まずはどんな人がかけてくるのか、いのちの電話・東京事務局の
後澤京子さんに聞きました。
「やはり孤独の中にある方ですね。孤独というのは、独り暮らしで
孤独という方もいらっしゃるし、またご家族や一緒に暮らしていたり
していても、人の中にいて孤独を感じられる方もいらっしゃると
思うので、やはり人を求めて、ここの電話を利用していただくことが
多いと思います。人と関わりの難しさから来る困難を抱えている方が
とても多いですね」
東京事務局の去年1年間の相談件数は、2万8000件。
1日に平均で70〜80件です。
年代別にみますと40代が26%、次いで50代が20%と
中高年の割合が高くなっています。
相談の内容は、将来の不安など人生に関係するものが24%と最も多く
家族を含む人との関係、仕事の問題、こころの問題なども
多く寄せられました。
このうち、自殺の傾向がある相談は16%に上ったということです。
電話を受けるボランティアの相談員は、東京の事務局では
50代の女性を中心に男女あわせて300人ほどが交代で
月に2回ずつ担当しています。
私が取材した時は、4人の女性相談員が電話を受けていました。
それぞれ仕切られたテーブルに電話があり、
相談員が電話の相手にやさしく「ウン、ウン」とうなずいたり
相手の話を丁寧に確認したりして、話を聞いている様子でした。
1回の電話は平均で30分くらいで、
1人の電話が終わるとすぐに着信があり、
回線は混雑しているようです。
再び、後澤さんの話です。
「私たち市民活動としてできることは、専門的な知識もあまり
ありませんし、それでもお話をうかがわせていただくとなると
こちらが丁寧に誠心誠意お聞きしていく。それで、その人が
訴えることに耳を傾けるというような、そういう姿勢で受けることが
できることではないかと思っています。
対話をしていくことでお気持ちが少しでもほぐれて
幾分かでも軽くなっていただけたら
私たちが望んでいるところですね」
ただ、その相談員の数が減ってきていて、募集をかけても
なかなか集まらず、場所によっては電話回線を減らしたり、
受付時間を短縮せざるを得ない所もあるということです。
また、新たな募集をかけてもなかなか集まらないそうで
その理由は、まず『ボランティア』だということ。
そして、相談員になるために様々な『研修』を受ける必要があること。
しかもその研修が『有料』で、トータルで数万円かかるということも
ハードルになっているようです。
そこのところを、後澤さんに聞きました。
「研修のほうなんですが1年半組んでおります。
少し長いんですね。やはり正直そのあたりも少しボランティアの
活動としては敷居が高いのではないかなと思うんですけれども、
やはり本当に深刻な人の悩みを聞くことがとても多いので、ある程度
時間をかけて聞く姿勢を磨いていただくということも
必要になってきます。人に対して関心をお持ちの方でないと
なかなか続けられないかなという風に思います」
この研修は、相談のジャンルに応じた専門家による講義や
グループに分かれての実習といったもので
相談員になった後も、月に1回の継続研修があるそうです。
相談員の募集は、東京のセンターでは11月まで受け付けています。
詳しくは、いのちの電話のホームページをご覧ください。
また、深刻な悩みを持っている方、相談できないでいる方、
電話の向こうに話を聞いてくれる人がいます。もちろん匿名です。
東京以外にも全国にセンターがあります。
電話は混雑でかかりにくい時間もありますので
つながらない場合は、時間をおいてかけ直してみてください。
関連情報・お問い合わせ先
- いのちの電話・東京
相談電話番号 03-3264-4343 (24時間・年中無休)
http://www.indt.jp/