今日は、2月1日をもって閉館する渋谷区・青山の「こどもの城」について
TBSラジオの中村友美ディレクターが取材しました。
全国で唯一の、国立の児童館ですが、30年の歴史に幕を閉じます。
閉館を前にお父さん・お母さん達はどのように感じているのか聞いてきました。
「ここは閉館するから1度くらい行ってみたいということで、
思ったより空間が広くて、こんだけいろんなお母様方、お子様方が
集まって遊べるってとこはなかなかないので、さみしいですよね」
「周りの方から、子供達うるさいなという目で見られているのは
すごい感じるので、周りの目を気にせず自由に遊ばせられるスペースが、
周りにはないです」
「民間も増えてると思うんですけど、値段も高いですよね。
これぐらいリーズナブルの方が来やすいです」
都心では特にこういった、屋内で、値段も安くて、
周りも気にせず遊ばせられる場所が少ないので、
無くなると困る、と言っている方はたくさんいました。
厚生労働省によると、こどもの城の閉館理由は大きく2つあり、
1つは建物が老朽化してきたこと。もう1つは各地域で
児童館や子供向けレジャー施設の整備が進んできたことだそうです。
さらに今年4月からは、「子ども・子育て支援新制度」が本格的に始まり、
児童館運営も含めた、子育て支援の中身は市区町村に委ねられます。
国は、財源の確保や制度設計は行いますが、国が直接運営する児童館、
つまりこどもの城は必要なくなったということなんです。
ただ、こどもの城、今も利用者は多くて、
昨年度は併設する劇場の来場者も含め80万人が訪れました。
中には、年間を通じて講座に通っている子もたくさんいます。
スイミングの講座を受ける娘さんと共に9年間、
こどもの城に通ってきた、森田裕美さんのお話です。
「子供の気持ちのよりどころが大きく無くなるっていうのが本当に困りますね。
子供はすごく水泳が好きなんですが、体がもしかしたら弱いかなと思って、
無理やり泳がせる感じではなかったので、こちらのやり方が安心だった。
他のスイミングスクールとかを考える?という風に聞きますと、
行く気はないと言って。ここを無くさないでほしいっていうのしかなくって。
署名活動を中心にやってくださってる方がいて、
できることは皆それぞれの立場で協力していたと思います」
閉館に反対する署名運動も行われ、7万4千人以上の署名が集まりました。
また、こどもの城がある地元の渋谷区、港区の区議会もそれぞれ
「存続を求める意見書」を国に提出しました。
ですが、閉館の決定は覆りませんでした。
考え直す余地はなかったのか、厚生労働省に聞いたところ、
「ご意見はご意見として受け取ったが、2年前に閉館を発表した時の
プレスリリース以上に言えることは無い」とのお答えでした。
一方、こどもの城の閉館に困っていたのは、利用者だけではありません。
全国の児童館も、困っていました。
こどもの城・児童館事業運営部の中村裕(なかむら・ひろし)さんのお話です。
「こどもの城のいろいろなプログラムを、各都道府県の児童館に行って、
児童厚生員の方とか、保育所の先生達に伝えに行きました。
こちらの方から出向くということもあるんですけど、
こどもの城で研修会をやって、各地の児童館の先生達が、
2泊3日ぐらいの研修を行いました。
来られた方々の声を聞きますと、これからどうするんだ。
我々はこういうようなプログラムの展開、
そういうものを何を見本にしてやってったらいいんだろうかという声が
良く聞かれます」
中村さんたちこどもの城のスタッフは、30年間で全国746件の児童館に、
遊びのプログラムを教えに行きました。
そうして蓄積されてきた遊びのプログラムは3,500以上もあって、
インターネット上では今後も見られるように、アーカイブを準備中です。
ですが、直接新しい遊びを教える機会については
今後あるのかどうか、分かりません。
また、全国の児童館に直接行った中村さんは、
その現状を見て、こうおっしゃっていました。
「こどもの城振り返ってみると、道具・用具のことに関しても、
恵まれていたということがあります。
他の児童館等は、昔ながらの道具をずっと使って、
修理しながら頑張ってる児童館はいっぱいあるんですけど、
そういうような予算を立ててもらって、子供達によりよいものを、
道具としてあったらいいなと」
このお話を聞いて、全国の児童館はまだまだ整備されていないんじゃないか?と
思い、厚生労働省に尋ねたところ、
「統計上の、施設の数としては整備が進んできた。個々の児童館については
市区町村の建物だから、国ができることは無い」とおっしゃっていました。
ですが統計の数字だけじゃなくて、
その中身もちゃんと見て欲しい、と思ってしまいます。
こどもの城は、国が舵を取って、子供達が遊べる環境を整えていく、
その象徴だったとも言えます。無くなってしまうのは本当に残念です。
関連情報・お問い合わせ先
- こどもの城 国立総合児童センター
http://www.kodomono-shiro.jp/index.shtml