担当:崎山敏也
埼玉県の杉戸町に去年の6月、障害のある子供のデイサービス施設、「JWAデイサービスすぎと」がオープンしました。身体障害や知的障害、発達障害のある子供達が放課後の時間や休みの日を過ごす施設です。
そして、この「JWAデイサービスすぎと」にはある特徴があります。福島県富岡町の住民が杉戸町の住民と協力して、立ち上げた施設だということです。
杉戸町と富岡町は友好姉妹都市の関係にあったんですが、震災の時、富岡町は被害を受けたうえに、事故を起こした福島第1原発から20キロ以内の警戒区域に入ってしまいました。そこで、杉戸町は、多いときで200人以上の富岡町などからの避難者を受け入れたんです。
デイサービス施設の発起人となった、避難者の一人、佐藤純俊さんに話を聞きました。
福島の知的障害者の施設で長年働いてきた経験がある佐藤さんですが、「杉戸町に避難してきた時、ほんとに家族同様の温かい歓迎というか、待遇でずっといるわけです。そこで、言葉だけじゃなくて、何か地域に恩返しできないかと考えていたときに、自分の経験を生かした障害児のデイサービス事業を起業するということを思いついたんです」と話します。
温かく受け入れてくれた地域に恩返ししたい、地域に貢献したいということなんです。
そこで、杉戸町を中心に活動しているNPOと協力して、NPO法人「JWA=日本社会福祉事業協会」を作り、準備を進めて、去年6月、オープンにこぎつけました。
「JWAデイサービスすぎと」は、東武日光線杉戸高野台駅から歩いて、2、3分。ビルの1階にあります。玄関にはオープンニングセレモニーで子供達が思い思いの色のペンキを塗った木の板が飾られていて、とてもカラフルです。
受け入れる対象は杉戸町と、避難者が同じくお世話になった、周辺の宮代町と幸手市です。
取材した時は、毎日3人から5人ぐらいの子供達が利用していて、子供達はそれぞれの個性を尊重されながら、ボール遊びや、読み聞かせ、絵を描いたり、音楽を聴いたりと、思い思いに遊んで過ごします。まわりには公園もたくさんあるので、天気の良い日は外に遊びに行くこともあります。
実は崎山記者が取材した日はクリスマスイブ。遊び道具にハンドベルが用意され、おやつはクリスマスケーキでした。子供達はベルを鳴らして、遊んだり、ケーキを美味しそうに食べたりと、大騒ぎでした。スタッフの一人は「楽しそうにしてくれているので、うれしいです。みんな笑顔が絶えないです。それが一番いいかなと思います」と話していました。
さて、午後5時を過ぎると、スタッフに送られて家に帰ります。障害のある子供がいる家庭ではどうしても母親に子育ての負担が行きがちです。放課後、このデイサービスに通わせることで、母親も休息をとったり、趣味の時間を持つことができるし、 働きたい場合は、働くことができるようになるのでは、ということでした。
そして、富岡町の避難者の人たちの思いから始まったこの施設ですが、取材した時点で、8人のスタッフのうち、3人が富岡町から避難してきた方でした。
車での送り迎えや、遊び相手をしている富岡町出身の男性は「子供相手だったら、大丈夫かなと思ったし、一応送迎の仕事といってたんで引き受けましたが、思っていたよりは大変でした。でも、今はぜんぜんやりがいがあります。やってよかったなあ、というのが今の気持ちです。子供たちも一緒に毎日のようにふれあっているから、かわいくて。このまんまでいけば、続けていけるかな、という風には思っています」と話していました。
運営するNPO法人に「日本社会福祉事業協会」と「日本」をつけたのもわけがあります。
原発事故の避難者は杉戸町だけでも、埼玉県だけでもなく、全国各地にいます。「JWAデイサービスすぎと」をモデルケースにして、全国に広め、避難者の働く場を作りたいということなんですね。
JWAの豊島亮介理事長は、「そのためにも、まず、JWAデイサービスすぎとの運営を軌道に乗せたい。子供達も成長していくので、新たに生まれるニーズに応えて行きたい」と意欲を語っていました。
関連情報・お問い合わせ先
- JWAデイサービスすぎと
http://www.jwasugito.com/