担当:長田新
今日は、最近、全国に広がりを見せている「認知症カフェ」について、お伝えします。
ちょっと耳慣れない言葉かもしれませんが、認知症の人や家族が集まって、悩みを相談したり、介護の情報を得たりする場所です。
ひとくちに「認知症カフェ」といっても、毎日開いている常設のものから、月1回程度開いているもの、「認知症カフェ」と名乗っているところ、認知症の方とお年寄りが一緒に利用しているところなど、形はさまざまです。
今回は、東京都武蔵野市で13年前から営業を続ける「そ〜らの家」を取材しました。この施設は、ご自分で通って来られる元気なお年寄りを対象にしたミニデイサービスを行っています。
お邪魔した時には、みなさん、コーラスの練習をしていらっしゃいました。聞いていて、暖かい気持ちになる歌声でした。この日は、女性14人、男性3人の、合わせて17人のお年寄りが集まって、発表会に向けたコーラスの練習をしていました。
1回の利用料金は500円。皆さん、11時過ぎに集まり出して、歌や体操をした後、手作りの美味しいお昼ご飯を食べて、1時半から3時まではコーラスのレッスンをしていました。その後、お茶を飲んで、午後4時には帰って行きました。
「そ〜らの家」を運営している、地域の有志の集まり・グループ萌葱(もえぎ)代表の垣原睦恵(かきはら・うつえ)さんにお話を伺いました。
『もう、ここも13年経ってますから、最初は健常者であっても、徐々に徐々に認知症になられる。それで、私どもは、ほとんど毎週見ていますから、「あ〜、ちょっとどんどん進まれているな」と。で、家族にお話しして、「あっ、思い当たるは。こういうこともあったな」ということで、「本当に有り難う」と言われていることも、まま、多いんです』
徐々に進む病状は、ご家族はなかなか分かりにくいのかもしれませんが、そこを、施設の方が冷静な目で見て下さっているんです。ご家族の方も、色々な意味で本当に助かっているようなんです。奥様と一緒に「そ〜らの家」に来ていた男性の声をお聞き下さい。
『毎日、あのう、食事の支度を私がしてますから、1食、準備をするのが助かるわけですね。それから、その後、皆さんが一緒に歌を歌ったりして、3時頃まで過ごしてくれますでしょ。私は、自分の好きな勉強。というか、ここでもって、本を読んだり、1時間半、自分の時間がここで持てるんですね。ですから、ここに来ていると助かるんです。うふふふ』
普段、何かと気苦労が多いご家族も、ふっと息を抜ける場所になっているんです。
今度は利用者の方の声をお聞き下さい。
『僕、ひとり暮らしなんですよね今。まあ、寂しいということもあるし、お昼にね。ここで食事が出るんです。そうすると、くっついているのが、こういう歌とかね。これまた健康に良いと思うんです。お付き合いさせてもらう。で、「帰る」って言うと、「まあ、しばらくいてよ」なんて言われたりしまして…』『私は、歌が大好きだから、歌えることが嬉しいんですね。それから、皆さんとね。同じような年の方とお話しできますし、こうして、美味しいものも頂けますし、うふふふ』
皆さん、とても楽しみにされているようです。
今、全国に広がりを見せている認知症カフェ。その意義を、グループ萌葱(もえぎ)の垣原睦恵さんはこう話しています。
『認知症って、いつ誰もならないっていう保証もないし、ただ、恐怖心は皆さんありますよね。「ああいう風になったらどうしようかしら?」って。「でも、ここへ来れば、また皆んなとおしゃべりができる」という安心感もあるわけです。「ここに来れば良い。会える!」と皆さんに。だから、その皆さんが、ここに気安く来て下さって、居場所として利用して頂ければ一番良いかなと思っています』
公益社団法人「認知症の人と家族の会」の調査によりますと、「認知症カフェ」は、2012年末時点で全国9都府県26カ所あったそうです。
認知症の人の増加を受けて、厚生労働省が去年、「認知症カフェ」の普及を盛り込んだ「認知症施策推進5カ年計画」通称・オレンジプランを策定したことで、行政の支援を受け易くなったこともあり、今後ますます増えてくると思います。
関連情報・お問い合わせ先
- そ〜らの家(グループ萌黄(もえぎ)・代表・垣原睦恵さん)
0422−71−3336