担当:崎山敏也
有名人のインタビューや対談、様々な連載記事が載っている
「ビッグイシュー」という雑誌があります。ホームレス状態にある人が、
街頭で販売する雑誌で、定価は300円。うち160円が販売者の収入になります。
販売者は売る場所や売り方を工夫して、売り上げを伸ばし、
路上生活からの脱出、生活の自立を目指します。
ホームレス問題解決の一つの試みとしてイギリスで始まり、日本では今年、
販売開始から10周年となりました。ホームレスの人たちをお金や物で
支援するのではなく、チャンスを提供する雑誌です。
この「ビッグイシュー」を応援する音楽イベント「りんりんふぇす」が10月、
東京・港区内で開かれました。「りんりんふぇす」が開かれるのは今年で4回目。
呼びかけたのはシンガー・ソングライターの寺尾紗穂さんです。
「りんりんふぇす」では、来場者に「ビッグイシュー」が一冊無料で手渡されます。
寺尾さんは「周りの人に勧めると、知っているけど、買う勇気がないとか、
どういう内容かちょっとよくわかんないので、その一歩が踏み出せないとか、
そういう人が割と多かったので、それだったら、最初の一冊目を無料で読んでもらう、
そういう場を作りたいな、と思ったんです」と話していました。
「りんりんふぇす」という名前は、「隣の人と輪になって歌おう」という言葉の
「隣」の「りん」と「輪」の「りん」からつけました。
一緒に同じ場で音楽を楽しむことで、ホームレスの人たちとの距離感を
少しでも縮めて、身近に感じてほしいというわけです。
イベントのトップバッターは寺尾さん。
日雇い労働者の街、東京の山谷で出会った路上生活の男性との出会いや交流から
インスピレーションを得て生まれた歌が中心でした。
今はけがをして働けないおじさんがビルの工事現場でアジアからの労働者たちを
まとめて働いてきたことを歌った「アジアの汗」という歌では、
ビッグイシュー販売者のグループ「ソケリッサ」が歌に合わせて、ダンスを披露しました。
寺尾さんのファンだという女性は「すごいいろんな多様な人が来てて、会場の雰囲気もいいし。すごい楽しんでます」と話していました。また、子連れの男性は「子供も楽しんでいるようで、良かったな、と思いますけど。ビッグイシューも買ってみたいと思います」と話していました。また、ある女性は「ホームレスの方が踊ったりとかされていて、
なんか私の中でどこか先入観があったりすると思うんですけど、そういうのなしに、一緒に楽しめる空間なのが、ちょっと異色であって、楽しみでもありますね。買うのに抵抗があるというか、ちょっとどう買ったらいいのかな、というのがあったんですけど、いいきっかけになるかな、と思います」と話していました。
寺尾さんに続いて、NRQ、七尾旅人、石橋幸、加川良と、多彩な顔ぶれのアーティストが登場したほか、会場の外には屋台も出て、賑わいました。浄土宗のお坊さんたちによる社会的弱者支援の団体「ひとさじの会」の炊き出し、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」によるフェアトレードコーヒーの販売、路上生活を経験した、身体や心に障害のある人たちが、地域のパン屋と協力してパンを焼く「池袋あさやけベーカリー」などです。
また、会場ではビッグイシューの販売者がバックナンバーを売りました。普段は
JR渋谷駅の東口で売っているという男性は「最初のスタートはかなり厳しいものがありました。売れない日も続きました。でも、続けることによって、お客様がだんだん増えていって、それなりには売れるようになりましたので、路上からのステップアップ、路上からの脱出はクリアしたんです」と話していました。男性は、「安定した収入の得られる仕事につくことを目指して、もっとステップアップしていきたい」とも話していました。
もう一人、JR恵比寿駅の西口で販売している男性は、人と触れあうのが好きで、
イベントでの販売に立候補したそうですが、「ちょとずつでいいから、今の路上生活の状況を変えて行きたい」と話します。そして、「もし、路上で販売者を見かけたら、
お気軽に声をかけてもらえれば、ありがたいです」と話していました。
興味はあるけど、どこで買ったらいいかわからないという方は
「ビッグイシュー」のホームページを参考にして下さい。
関連情報・お問い合わせ先
- 寺尾紗穂さんのページ
http://www.sahoterao.com/
- ビッグイシュー日本
http://www.bigissue.jp/