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小型家電のリサイクルを障害者が担う
放送日:2013年06月15日
担当:崎山敏也
「小型家電リサイクル法」が2013年4月に施行されました。使用済みの携帯電話やデジタルカメラといった小型家電のリサイクルを推進しようという法律です。リサイクルすると金や銀、あるいはパラジウムといったレアメタルと呼ばれる貴重な金属を取り出すことができます。
その小型家電のリサイクルを福祉に結びつけようという神奈川県のモデル事業を取材しました。小型家電は市町村が回収して、リサイクル事業者に引き渡します。引き渡すとき、丁寧に分解され、分別されていれば、再利用される金属の量は増えます。その「分解、分別の作業」を福祉事業所が担当するという事業です。
現在、神奈川県の伊勢原市が行っていて、伊勢原市の環境美化センターが集めた小型家電が市内にある3つの福祉事業所に渡されています。その一つ、知的障害者が利用する「地域作業所 ドリーム」を取材しました。
ドリームでは小型家電のリサイクルの他にも様々な作業をしていますが、不況の影響で最近なくなった作業もあるうえ、現在取り組んでいる作業でも、受注に波があるそうです。ドリームの所長、豊田眞智子さんは「仕事がある時は急いで搬入してくれ、となる一方で、なくなると、2週間ぐらい何も利用者がする仕事がなくなります。なかなか安定して作業ができないのですが、そこにちょうどこの解体の話がきまして、暇な時期を埋めて下さって、非常によかったなと思っています」と話します。たくさんというわけではないですが、取り組みが始まって半年、月に必ず何十点かの小型家電がくる状態が続いているそうです。まだ大幅賃金アップという状況ではありませんが、安定した仕事があるのは助かるということでした。
取材した日は、携帯電話と家庭用ゲーム機を分解、分別していました。例えば携帯の場合、汚れを拭いて、電池をはずし、ねじをはずして解体し、様々なパーツに分ける、という感じで役割を分担して、流れ作業で行っています。一つの携帯がていねいな手作業によって、基盤、プラスチック、電池、液晶など15ぐらいのパーツに分けられてゆきます。メーカーごとにねじなども違うので最初はとまどった面もありましたが、だんだん慣れてペースもあがってきたということです。
利用者の男性に話を聞くと、「金属が数十種類もあるので、やはり仕分けるのが大変です。最初は少しとまどいましたが、慣れてきました。貴重なものだと思うので、頑張ります」と答えてくれました。また別の利用者の女性は「スピーカーをはずしたり、細かいねじをとるのが、楽しいです。この携帯が、ごみと一緒に混じってしまって、業者の人も困っているから、私たちが少しでも解体すれば、業者の人たちが助かるかなって思ってます」と話してくれました。
伊勢原市障害福祉課の佐伯明さんは「利用者にはレアメタルが日本の中で回収されて、また新しいものに生まれ変わるということを理解してもらっています。自分たちが世の中とつながっているという気持ちがもてるんです」と話します。障害者の社会参加の推進にもつながっているわけです。
課題は回収する小型家電を増やすことです。伊勢原市では、不燃ごみの日に、職員がごみ集積所で小型家電を選びだして回収するほか、市役所や公民館に小型家電の回収ボックスを設置して、市民へのPRにつとめ、家庭に眠っている携帯などの小型家電を少しでも多く掘り起こしたいとしています。回収量が増えれば、将来的には作業する障害者の賃金アップにもつながります。また、神奈川県としては伊勢原市を参考にして、他の市町村にも広がることを期待しています。
「環境」と「福祉」がしっかり結びついたこの試みの行方が注目されます。
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