担当:長田新
今回取材したのは三軒茶屋のフレンチレストラン「アンシェーヌ藍」です。
お店は、駅の出口から歩いて5分もかからないところにあるビルの2Fにあります。
お店に入ると、いきなりハープの生演奏が聞こえてきました。
ここでは木曜日と金曜日に、ハープの生演奏を聞きながら食事が楽しめます。
一見すると、普通のレストランなんですが、
実は、精神疾患や知的障害のある人たちが中心となって
営業しているんです。
「アンシェーヌ藍」は、社会福祉法人「藍」が運営しているフレンチレストランで、
以前、カフェを運営していた場所に4年前にリニューアルする形でオープンしました。
このレストランのほかに、障害を持つ人たちが藍染めや織物を作っている藍工房と、
皆さんが共同生活をしているグループホームがあります。
レストランでは、障害を持った方が21人登録していて、
1日平均で12人の方が、厨房やホールで働いています。
シェフは、都内の老舗結婚式場で長年シェフを勤め上げた方を
迎えているので、味は本格的です。
フランス料理というと、接客する方にもマナーが求められますし、
障害者の方がレストランを切り盛りするというのは、ちょっと大変そうに思います。
障害を持った方がレストランで働くことについて、
レストランを運営する社会福祉法人「藍」・理事長の竹ノ内睦子さんに伺いました。
『これほど綺麗な環境を作れば、信じられないような動きが備わってくると言ったら良いんですかね。環境に合った動きを自分たちでなさいます。これは新しい発見でした。舞台が整っていれば、それに見合うような動きをやっています、みんな。過去に失敗はあります。ビールを洋服にかけてみたり、コーヒーのミルクをかけてしまったりとかっていう。でも、それは、みんな一生懸命なので、お客様の感情を害するようなことは何もなかったです』
失敗しながらも、皆さん、一生懸命仕事に取り組んでいるんです。
お店の中には、実際にレストランで働いている障害者の方と、
お店の経営を管理する社会福祉法人のスタッフの方がいらっしゃったんですが、
どの方がスタッフで、どの方が障害者なのかは、説明を受けるまで全く分かりませんでした。
しかし、障害を持った方が、一般のお客さんを相手にして、
このような緊張感のある職場で働くことは、苦労する点もあるようです。
障害のあるスタッフの方に、働いてみての勘感想を伺いました。
『お仕事は週何回ですか?今は週2回ですが、来月から週4回になります。すごく嬉しいことですけれども、でも、それに甘んじることなく、着実に体調を崩さずに、細く長く続けられればと思っております。』
「どのぐらいですかお勤めになって?1年と半年です。あっ、じゃあ、やっぱり、ご病気の方も、こうやって、勤めながらやっていらっしゃる方が、状態は良い?」
「良いですね。ドクターもびっくりしています。『こんなところで勤まるとは思わなかった。別人のようだ』と。」
「じゃあ良いことばっかり…?」
「ただ、波がすごいんですよ。」
「波」と仰っていましたが、ご自身の体調と、仕事の折り合いの付け方に苦労があるんですね。
そして、そのために、ご自分の状態が良くない時は、仕事を休むこともあると仰っていました。
また、皆さんの負担を少なくするために、営業時間は、
基本的に平日の午前11時半からの3時間だけで、
夜は予約制にして貸切パーティのみ受け付けています。
お客さんに感想を聞きました。
『「お料理がすごく美味しかったです。あと、レストランの雰囲気もすごく良いし、ハープも聞けて、お値段がリーズナブルで、すごく良いところを教えて頂いたと思っています。」
「初めてなんですが、そんな風に思えないですし、むしろ、皆さんをお誘いしてここに来たいなという風に思ったぐらい、すごく心地が良いです。」
「娘が藍工房の方にお世話になっているので、時々は、利用させていただいています。絶対に、あの子達の職場として残しておきたいと思いますので、何とか皆さんのご協力で…。」
障害を持つ方たちの努力に加えて、周りで応援するお客さんや
ご家族、そして、社会福祉法人のスタッフの支えがあって、
このフランス料理店が成り立っているんです。
また、お客さんの中には、障害を持つ方たちが真剣に働く姿を見せようと、
ご家族や知り合いを連れてお店にやってくる方もいらっしゃるそうです。
障害者の方たちが働く姿は、色々な方たちの目標にもなっているんです。
関連情報・お問い合わせ先
- アンシェーヌ藍
http://www.ancienne-ai.aikobo.or.jp/