担当:波岡陽子
渋谷区恵比寿にあるシェアハウスを取材しました。
このシェアハウスが他と少し違うのが、
障害がある人とない人が共同生活をする、というシェアハウスだということです。
「パレットの家いこっと」といって、知的障害者を支援する
NPO法人ぱれっとが主体となって、3年前に作られました。
なぜ、障害がある人とない人が一緒に住む家を作ったのか、
ぱれっと事務局長の菅原睦子
さんに聞きました。
(菅原さん)
ちょっとの支援、手助け、手を差し伸べたなら、十分暮らしが成り立つ障害者も
たくさんいる。そういう人たちが暮らせる家がない。
だったら自分達でつくって、彼らが地域の中で
暮らせるものそれをつくりたかったというのが一つですね。
「いこっと」に住んでいる人は、知的障害の方なのですが、
仕事をしていますし、お風呂やトイレなど日常生活は一人で送れます。
ただ、例えば、宅配便などが来た時に、どういう対応をしていいか
分からなかったり、出るのが怖かったりすることがあるので、
そうした困ったことがあった時に、すぐに相談のれる
というのが「ちょっとの手助け」なんです。
また、「いこっと」には、介助する人は誰もいません。
困ったことがあったら、月に一回の入居者ミーティングで、
みんなで話し合って決めています。
このシェアハウスは、家賃が6万円前後で8部屋あります。
今は、障害がある人が2人、障害がない人が4人の、
合わせて6人で暮らしています。
そして、入居の条件は、
働いていて、コミュニケーションを大事にする人で、
知的障害の人をサポートする、というコンセプトに
賛同できる人であれば誰でもよいそうです。
このコンセプトを守ってもらえるかお互い確かめるために
入居希望者には、2泊ほど体験入居をしてもらっています。
障害がある人は親元を離れて、一人で、また知らない人と
共同生活をするのは、不安もあるものです。
そうしたこともあって知的障害の人は、
8割以上が実家で暮らしているといわれています。
そうした中、2年前に初めて実家をはなれて
「いこっと」に来た石橋美帆さん37歳は、こう話します。
(石橋さん)
最初は不安ありました。
だけど自分が頑張れるのはここしかないと思って。
自立していかなくてはいけないんだと思って。
ここのみんなの優しさを味わいながらここまで
なんとかやってこれた。
家に住んで一緒にいること自体が幸せ。安心する。
私が自慢できる家です。
一緒にすむうちに、心境が変わっていったようですね。
仕事のことや人間関係で悩むことも多かったようですが、
まず、ここには自由があることが大きいということでした。
実家暮らしでは味わえないような年齢や職業の違う
色々な人に出会えることが、生きがいになっているとおしゃってました。
ここに住んで、障害がある人も変わってきてますが、
障害がない人も変わってきたことがあるようです。
今までシェアハウスなどで共同生活をしたことはあったけど、
障害がある人と暮らすのは初めてだったという、
27歳の冨澤太郎さんはこう話しています。
(冨澤さん)
最初不安多少はありました。
実際住んでみると障害者、健常者って線を引くことっていうのは何なんだろうと思い始めました。
自分もできないこと、苦手なことはあるし、人それぞれなわけで、
そこを社会がどう線を引いてるかっていうことなのかなという
風には考え始めるようになりましたね。
障害者に対する考え方、価値観、自分の見てた視線は大きく変わったなと思います。
確かに障害のある人とない人の境目というのはあいまいなのかもしれません。
生活する上では、障害のある人が、障害がない人をサポートしているという面も
あるようです。
障害のない人は身のまわりのことは親が何でもやってくれて
育ってくる人も多いようですが、
障害を持った人は小さいころから掃除や洗濯、料理など、
生活に関わることを学校などで習うので、
障害のない人よりも得意なんです。
このシェアハウスはうまくいっているようにも感じますが、
課題もあるんです。
3年たって、お互いがサポートしあえる家にはなってきていますが、
障害のない人が忙しく、平日の会話が少なくなってしまうそうです。
そこをどう埋めていくのか、今後コミュニケーションの取り方を
工夫していかなければいけないという事でした。
働きながらだと時間を取る事が難しい部分もありますが、
障害のある人とない人が一緒に暮らす取り組みを通して
両者の壁を取り払っていってほしいですね。
関連情報・お問い合わせ先
- NPO法人ぱれっと
03−5766−7302
- ぱれっとの家 いこっと
http://ikotto.npo-palette.or.jp/