今日は「協同労働」という新しい働き方についてTBSラジオの澤田大樹記者が取材しました。
「協同労働」とは、協力するの「協」に「同じ」と書く「協同労働」です。
この「協同労働」とは一体何なのか、神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会専務理事の河村尚子(かわむら・なおこ)さんはこう説明します。
「基本的には地域に住んでいる市民がそこに必要なサービスを事業化しようというのがはじまり。事業をやるために必要なお金とか経営とか、労働もそこに集まった人たちが担う。一人の雇用主がひてその人に雇われて働くのではなくて、みんなの思いを一緒にしてそこでそういった地域に必要な事業を進めていく。そういった意味で働く人の「協同組合」と位置づけています。」
「雇われて働く」というのとは異なり、「協同労働」に参加する人は出資者であり、
労働者でもあるというのが特徴なんです。
神奈川県では主婦たちが安全な食材を求めて生協の組合員となったことが
始まりなんだそうで、協同労働をしている団体は
「ワーカーズコレクティブ」や「ワーカーズコープ」と呼ばれて
現在、全国でおよそ3万人がこの「協同労働」の形で働いています。
具体的な仕事内容としては神奈川県では生協活動からスタートしているので生協の配送業務、
それから保育、介護、弁当・食事サービスなど
地域に根ざしたものが中心になっています。
今回取材した神奈川のワーカーズコレクティブでは90%以上が女性で
年齢は20代から80代までと幅広いんです。
経営者でもあり労働者でもあることから仕事の量を調整することが出来るため
家庭の事情でフルタイムで働けない人や、病気を抱えた人も働くことが
できるんだそうです。
仕事量を調整できるのが特徴なんですね。
こうした特性を生かして心の病を持った人や、ニートの人たちなどが
働くための場として活用しようという動きも始まっています。
心の病を持った人やニートの人とワーカーズコレクティブをつないでいる
NPO法人ワーカーズコレクティブ協会の岡田百合子さんのお話です。
「ワーカーズコレクティブはもともと短時間ワークから積み重ねているので、短時間ワークの用意ができるというのはすごい。毎日働けないし、体力もない。そうなってくると短時間ワークの中で出来ることを探していく人たちとか資格を持っているけれど経験がないという人には資格を生かした事業所を紹介して、週に1回2〜3時間からそれを少しずつ増やしていくという形で働く気力や意欲とか自信回復とかワーカーズコレクティブの現場に入ると芽生えてきます。」
働く意欲や自信を取り戻す場としても活用できるんですね。
岡田さんたちは2004年からの8年間で200人の就労をコーディネートしたと話しています。
協同労働をしながら心の病を持った方や実際にひきこもりだった人を
受け入れている運送会社・ワーコレキャリーの熊谷容子さんに一緒に働く上で
心がけている点について聞きました。
「うちは見習い期間は3ヶ月という規約があったりするが、彼らは3ヶ月では独り立ちは出来ないので倍に伸ばすということを合意して長い目でそこを応援する。そこの大きなきっかけになるのが彼らのやる気が見えるとみんなの応援しようという思いは高まる。」
時間をかけることで、働くことや人と付き合うことに自信が持てるということなんですね。
それにワーコレキャリーのメンバーは子育てや介護を経験した女性が多く
待つことに長けている面も大きいそうです。
そのほかにも、ひきこもりの人にはひとりメンバーがついて一緒に作業し、
作業を小刻みにマニュアル化することで、
一人にかかる負担を少なくしています。
確実に広がりを見せているようですが、「協同労働」の課題は何でしょう?
実は、法制度が整備されておらず法人格を持つことが出来ません。
また、働く人が「雇う」「雇われる」の関係ではないため、労働保障の対象から
外れてしまいます。
そして、収益や効率性よりも地域での必要性が
重視されるので、必ずしも高い収入が得られるわけではありません。
まだ課題は多そうですが、「効率」ばかり叫ばれる中で、
「働くこと」とは何かを、考えさせられる活動ですね。
関連情報・お問い合わせ先
- 神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会
http://www.wco-kanagawa.gr.jp/
- NPO法人ワーカーズ・コレクティブ協会
http://www.wco-kyoukai.org/