担当:清水 栄志
今日は「てんかん」についてです。
「てんかん」というと「てんかんの発作で交通事故」
というニュースがありましたが、
その「てんかん」とは何だろう。「どれくらい理解されているのだろう」
という疑問がわいて取材しました。
国立精神・神経医療研究センターのてんかんセンター長、
大槻泰介(たいすけ)先生によると、
「てんかんというのは、脳の電気的な活動の異常。
ですから精神の問題という話はとっくの昔に無くなっている。
意識喪失発作というのがてんかん患者さんが一番悩むところ。
ある瞬間、わからなくなるということで、自分ではどうしようもない。
例えばホームから落ちたり、横断歩道歩いていてぼーっとなると
車にひかれてしまうとか。
ただ、なかなかそれが社会的な知識として浸透していってない。
ということでした。
「脳の電気的な異常」という説明でしたが、
その「電気的」というのは、
脳の中では「歩こう」とか、「座ろう」という体の動作をはじめ
いろんな「信号」がやりとりされています。
その「信号」が何らかの原因で正常にやりとりできず、いろいろな発作が起きるんです。
現在、日本ではおよそ60万人から100万人の方が
「てんかん」に悩んでいらっしゃるんですが、
てんかんに関して医療の分野では進んでいます。
再び、大槻先生に伺うと、
「原因は様々で、脳に傷があったり、脳卒中とか交通事故での脳の外傷とか、
その傷が原因で異常な電気活動が起こるようになると。
ある意味てんかんというのは誰でもてんかん発作を起こす可能性がある。
ただ、MRIやPETなどの検査があるが、それで診ると
脳のどこでてんかん発作が起こっているのかが見えるようになってきた。
原因がはっきりすれば取れば治るし、薬でもてんかんの種類によって
適切に選べば発作だってかなり止まる。」
ということでした。
手術や薬で発作を抑えられるし、治すこともできるということですね。
「てんかん」の発作は、人それぞれ違うのですが、
種類によって適切に薬を選べば、およそ7割の人は、
発作は起こりにくくなるそうです。
また、症状を最小限にとどめるための手術も行われています。
このほかにも大槻先生は適切な治療が受けられるように、
医療関係者のネットワークをつくって情報交換しているんです。
ここまでは医療面の話。
ところが、社会的にはまだまだ理解が進んでいないようなんです。
民間レベルで「てんかん」の患者さんの相談を受けている、
日本てんかん協会の事務局長 田所裕二(ゆうじ)さんのお話では、
「相談で多いのは、就職がしにくいとか、学校でいじめられてしまうとか
結婚に際して病気があるというだけで反対されてしまうとか。
社会生活上それぞれの中で、困った事に直面する度に
問い合わせを頂く事が多い。」ということでした。
また、田所さんは、
「1人1人を見てもらえるように、これはてんかんだけではないんですが
その病気がある人って見られるのではなくて、この人はこういう病気を
持っているけれども、サポートがあれば大丈夫ですよっていうことでいいと思うが、
どうしてもてんかんの場合、てんかんという病気が先に走ってしまうので、
Aさんという姿が見えなくて、てんかんのあるAさんみたいな事になってしまう。
厚生労働省や役所も理解を示されているので、
事業所向けには勉強する機会はずいぶん増えてきたので、
協会の関係のお医者さんや専門職の方々が行って行動はしている。」ということでした。
「てんかん」は特別なものではなくて、
他の病気と同じだと思ってもらえるよう、意識を変えていく取り組みを
今後も続けたいと仰っていました。
「てんかん」は一つの病名だけれど、いろいろな症状があって、
誰でもかかる可能性のある病気。
そして、治療すれば治る人もいる。
そういう認識を私たちが持つことで、理解も広がると思います。
「てんかん」については今月発行される東京都人権啓発センターの情報誌
『TOKYO(とうきょう)人権』でも取り上げます。
関連情報・お問い合わせ先
- 日本てんかん協会
http://www.jea-net.jp/
- 国立精神・神経医療研究センター
http://www.ncnp.go.jp/