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障がい者のための「スキンケア&メイク講座」
放送日:2012年08月04日
担当:岡本祥子
今回は、「基本のスキンケア&メイク講座」という
障がいのある女性を対象としたメイク講座を取材してきました。
有楽町にある「ハーバーサロン」というところで月にほぼ1回のペースで開かれています。
一人ひとりに基礎化粧品のセットや鏡が用意されて、
身だしなみや、スキンケア、メイクまでゆっくり丁寧に
2時間かけて学ぶことが出来るんです。
メニューを終えた28歳の女性を見て、一緒に来ていたヘルパーさんは
『とても可愛い。ピンク系のアイシャドウが似合って。よかったねぇ。
覚えた?テクニック。あはははっ。じゃあ今度は洋服の方も
メイクアップに合わせたもので。おしゃれ楽しみましょう。』
と感想を述べて、ヘルパーさんも褒めるほどの出来のようでした。
この講座は障がい者の仕事環境づくりに力を入れているエイブルアート・カンパニーと
無添加化粧品メーカーのハーバー研究所が共同で開いています。
エイブルアート・カンパニーの柴崎由美子さんはこう話します。
『今、障害のある特に女性たちが、メイクということがなかなか社会の中で
学ぶ機会がないので一緒に開発を始めた経過があります。
一人の社会人としての身だしなみとかメイクということにも注目が集まったり、
後押ししようという支援者が増えてきているんだなと思っています。』
社会に出るためには、ほかの女性と同じように、身だしなみが大切ということですね。
また、こうしたメイクをおぼえることで、
『自己肯定感』や『自尊心』、つまり自信を持てるという効果も期待できるんです。
2時間かけてゆっくり丁寧に学ぶこの講座。教え方も工夫を凝らしています。
メイク講座の講師で、ビューティープロデューサーの
廣森知恵子(ひろもり・ちえこ)さんの話です。
『健常者も障害者の方も共通点は「きれいになりたい」こと。
何が違うかと言うと、難しい言葉は使わないですね。例えばですね、
顔を洗うときにクレンジングというのは「クルクル回しますよ」と。
その「クルクル」が何が「クルクル」かわからない。』
という違いは一つはあるんですね。
このほかにも例えば「まんべんなく」という言い方がありますが、
これを「10回、トントントントンとやってください」と言い換えたり、
容器にも「クレンジング」は「あらう」。化粧水には「うるおす」。
美容液には「まもる」と、ひらがなでシールが貼られていました。
そして何よりも、間違ってしまっても「ダメ」ですとか、「あっ」という
声を出さないように気を配ります。
このように「やる気持ち」を萎えさせないようにしているんです。
この講座の意義について、エイブルアート・カンパニーの柴崎さんはこう話します。
『普通だったら、やる前に諦めていたり、わからないことをわからないと言える
ということ自体が、やっぱりどうしても障害のある人って恥ずかしいというか、
そういうことが言い難くなるから、恥ずかしがらずわからないことをちゃんと伝えて
わかるまで繰り返しやるという、この姿勢と時間を割くのは
ものすごい意味と価値があることだなと思います。
メイクを学ぶことで、コミュニケーションも学ぼうという意欲も湧くんですね。
女性にとって「メイク」は、本当にいろんな力を与えてくれます。
取材したメイク講座を受けた女性は、有楽町の「サロン」という
煌びやかな場所に来ることが初めての人が多くて、初めは緊張をしていました。
ただ、やるに従ってあっという間に表情が和らいで明るくなってきて、
最後に口紅をつけて鏡を見たときには本当に嬉しそうにしていたのが印象的でした。
講座を受けた40歳の女性の感想です。
『気分的に全然違います。化粧をすると女性だなって感じがします。
出来る限り続けていきたいと思っています。』
エイブルアート・カンパニーは、この有楽町の「ハーバーサロン」以外にも
出張講座を受け付けていて、これまでに400人ほどが受講したそうです。
最初は女性が対象でしたが、今は「男性向けの身だしなみ講座」も開いています。
社会に出るには「身だしなみ」が必要という話でしたが、
「メイク」を覚えることは外見だけでなくで、
内面=気持ちも変えてゆく力があるんだと改めて感じました。
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