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男性介護者を支える会
放送日:2012年07月28日
担当:楠葉絵美
今回は男性が親や奥さんを介護する
『男性介護者の会』を取材しました。
男性介護者支援の先駆けとして活動を始めた
東京・荒川区の「男性介護者の会」代表 荒川 不二夫さん84歳の話です。
「少しでもリラックスしてサポートしようっていうので会を作ったわけ、
そこで色々辛さとかをお互いに共有し合って、
少しアルコールもつけてリラックスして話しないと
男は右肩あげちゃってダメだっていうんで、
そういう会でやるようになって今日にいたったんですよ。」
男性が介護をするということは
介護に加えて、家事全般も自分でするわけです。
そのため、これまで家族任せだった家事をするようになって戸惑う人や、
仕事との両立が大変な人、悩みは多く、さまざまです。
こうした男性介護者は厚生労働省の調査では、
在宅介護をしている人の3人に1人になるそうで、その人数は増え続けています。
そんな男性の力になろうというのが、この集まりなんです。
ところが男性って、なかなか本音を話さないそうなんです。
そこで、最初は飲み屋で会を開きました。
すると、皆さんアルコールが入るとぺらぺらと自分の話をし始めたそうです。
今は月に一度、昼間に集まっています。
私が取材に行った日の参加者は、
現在介護をしている人、もう介護を終えた人も含めて11人。
介護職の方も参加していて、専門的な悩みにも応じてくれます。
会に参加していた人の話です。
「男性:ついこの間までカップヌードルも作らなかったので、
食材買ってきて飯を作るっていうのをやってますね、初めて。
少し面白くなってきましたけど、しんどいですよねやっぱり。
男性:すいません、惣菜屋で買ってました。
歩いて30秒から1分くらいのところに惣菜屋さんが下町なんで
いっぱいあるんで、役に立てておりましたがね、
だからやるのはおひたしを作るとかそんなようなことですね。
男性:最大の悩みはとにかく下ですよ、どうしても排泄ケアっていうのは一番。
精神的にも視覚嗅覚とそういったものが伝わってきますから、
それが一番きつい。
女性が男性の世話をするってとこまではなくはないけど、
男性が女性のそういうケアをするっていうのに比べると、
他は楽って言ったら語弊がありますけど、そこはありますよ。」
やはり料理の問題が多く、
そして大きな問題の1つとして排泄のこともあがりました。
皆さん「だんだんと慣れてくるけど、最初は苦しかった」と話していました。
また代表の荒川さんも、8年間、奥さんの介護をしていたんですが、
その時「奥さんに下着を買ってきて欲しいと頼まれたけど、
サイズがわからなくて、恥ずかしいやら汗ダラダラになった。
普通の夫婦生活の中で、奥さんの寸法とか覚えていれば、
もし介護になったってそんなに苦しまなくても出来たのにな。」
と、介護生活を振り返っていました。
普段本音をなかなか言わない男性としては
こうした体験談を聞くチャンスは少ないかも知れません。
この会に参加していた方たちの感想です。
「男性:これ本当、人によると思うんですけど、僕は僕でいっぱいなんですよ。
だから「ああなるほどな」「あ、そういう意味で言ってたのか」なんていうのは、
たぶん何年後に私もわかるんじゃないですかね。
男性:地域に繋がってない男性、ほとんどの方ってのは
ある意味で仕事人間ですから、本音を出して話せる意味ってのが
わからないだろうと思うんですよ。
とにかくもう自分の思いのたけをまずぶちまけてしまうっていうこと自体が
どれだけ肩の荷をおろすような、その部分てのは意味があるんだよって伝えたい。」
長い期間、仕事をしてきた男性だからこそ、
いざ介護が始まったら、仕事にとりかかるように真面目に
1人で黙々と介護をして精神的に疲れてしまうということもあるようです。
「自分一人でやってしまおう」
「自分一人で、苦難を乗り越えよう」
「人に頼らずにいこう」
こうした思いが強くて一人で抱え込んでしまう人は少なくないそうです。
ですから代表の荒川さんは、こんなふうに話しています。
「孤立してきたら余計ダメなんですよね、
自分から進んで人の輪、会の中に入っていくようにしなかったら
幸せというのは自分では求められないのかなと思いますけどね。
だから1つの殻に閉じこもらないでオープンに、
前に出ていくのは必要だと思いますけどね。」
こうした男性介護者の集まりは全国で広がっています。
しかし、一方で、まだまだ地域に顔を出さないで
1人で介護をしている男性は多いそうです。
全国の都道府県のほとんどに、こうした集まりがあり、
荒川さんは「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」という組織の中で
会報を発行したり、インターネットのホームページで情報を発信しています。
そうして
「一人で抱え込まずに、
最初は言いっぱなしでも良い、聴きっぱなしでも良いから
参加して欲しい」と呼びかけています。
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