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「芝の家」で地域のつながりを!
放送日:2011年08月06日
担当:楠葉絵美
今回は「芝の家」を紹介しました。
「芝の家」とは東京都港区芝にある共有スペースです。
ビルの1階を改装して、外観は木造家屋そのもの。
広い窓に縁側まであります。
引き戸をガラガラと開けて中に入ると、まず靴を脱ぎます。
20畳ほどの板張り床の部屋には、飲み物や駄菓子が売られていて
皆さん、木の長いすに腰掛けて話をしています。
とにかく窓が広くて常に開けているので、気持ち良い風が入ってきて
窓の横で育てている朝顔やゴーヤが揺れ、開放感いっぱいなんです。
なぜ、都心に「芝の家」のような共有スペースを作ったのか、
「芝の家」スタッフの渡辺久美さんに聞きました。
『港区芝と聞くと、東京タワーのふもとでオフィスビルが多く都心のイメージですが
実は下町っぽいところも残した地域なんです。
一方で大型のマンションも増えてきて、新しく引越ししてきた人は
どうしたらいいかわからないと思うんですよね。
そこで、新しく越してきた人や働きに来ている人が集まりやすいように
1つ場所を作って、昔から住んでいる人と出会ったり
一緒に活動を始めたり、地域の拠点になるようにと始めたことです。』
芝の家は2008年10月にオープンして3年目。
子供たちの成長を地域のみんなで見守り、買い物に出れば井戸端会議が始まる。
そんな昭和では当たり前だった風景、つながりを見直せないかと始まりました。
運営は港区と、近くにある慶応義塾大学が共同で行っています。
近所に住む人も、芝の家スタッフとして手伝います。
芝の家に来るのは、港区に住んでいる人、または港区で働いている人です。
利用している人たちはこんな風に話してくれました。
『お昼にお弁当持ってきてお昼を食べたりとか、息抜きたい時にフラっと寄ったり。』
『1週間に3日かな、休憩しに来るわけ。居心地が良いですよ。
』
『田舎を思い出します。田舎は縁側でお茶を飲みっていうのは普通でしたからね。』
今でこそ、子供からお年寄りまでが立ち寄りますが、
始めた当初は地域の子供たちが集まったため、
児童館だと思って大人は入ってこなかったそうです。
現在は子供中心の日、大人中心の日、と分けているため
利用者の年代に幅が出てきました。
そして、運営しているスタッフにも「ある変化」が出てきました。
『やっぱり子供たちは会うたびに大きくなっていくなと思いますね。
もちろん背が伸びるとかもありますけど。
例えば、最初はお互いに名前も知らないし、初めて会った人っていう感じから、
初めて私の名前を覚えて呼んでくれた時、すごい嬉しいと思ったり。
毎日少しずつですけど、つながりだとか関係性ってものが
育ってきているんだろうなという感覚があります。』
子供の成長をみんなで見られるのは嬉しいと話していました。
こうした地域のつながりは、3月の地震の時にも皆さんの支えになったようです。
スタッフの渡辺さんは、あの日をこう話してくれました。
『駅にいたけど怖いからこっちに来てみたっていう人や
旦那さんが帰ってくるまで家で子供と2人でいるのは怖いから来ましたっていう親子とか
結構何人も集まってきて、みんなでニュースを確認して過ごしました。
いざって時にあそこに行こうって思える場所があったり
頼れる人がいるっていうのは、
どれほど安心感を与えてくれるかという事を実感した日でした。』
芝の家は、普段は日中にオープンしていますが、
地震の時は夜もオープンしていたそうです。
確実に、地域の人の集いの場になってきています。
こうした場所は全国各地に増えていますが、運営が苦しい施設も多いということです。
だからこそ、渡辺さんは「もっともっと地域の人の手で
『ああしたい、こうしたい』と知恵を出し合って運営していくことが必要で
これからの課題です」と話していました。
今の時代は、交流の場所をきちんと作って運営していかないと
人との接点を保つのが難しいのかもしれませんが、
このような試みは大切に進めていって欲しいです。
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