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自殺対策に取り組むお坊さん
放送日:2011年05月28日
担当:楠葉絵美
今日は自殺対策として「手紙」のやりとりをしているお坊さんの話題をお伝えしました。
【自殺対策に取り組む僧侶の会】と言って、3年前から活動を始めました。
現在は宗派を越えた44人のお坊さんが手紙のやりとりをしています。
これまで相談の手紙を送ってきた人は全国から738人。
手紙の総数は3106通にのぼります。(※5月21日現在)
活動を始めたきっかけについて、
【自殺対策に取り組む僧侶の会】代表の藤澤克己さんに聞きました。
『僧侶として生きる死ぬということに関わっていますが、
ふとした時に、年間の自殺で亡くなる方が3万人以上だということをニュースで聞いて
「あれ、これって去年も一昨年もそうだったのに全然変わってないな」と感じた。
そこで何か自分たちでも出来ることがあるんじゃないかなと思ったのが、
活動を始めたきっかけです。』
実際、手紙のやりとりをどのようにしているのかというと、
手紙1通に対して、3人1組で返信の文面を考えます。
これは1人よがりな返信にならないためにしているんだそうです。
3人それぞれが意見を出し合って文面を決めますが、多い時は10回も書き直すこともあるんです。
相談相手の手紙を受け取ってから10日以内に返信するなど
本当に細かいところまで注意を払っています。
手紙を書く上で、どのような事に気を遣っているのか
代表の藤澤さん、副代表の前田さん、事務局長の吉田さんに聞きました。
『藤澤さん:せっかく手紙をくださったので、
書いてくださった気持ちをしっかりと受け止めることを大切にしています。
あまり手取り足取りをするよりも、その方自身が自分で歩み始めてもらいたいなと
そういう方向でやりとりが出来るように心がけています。』
『前田さん:相談者の方が何を伝えようとしているのか、
どういう気持ちで何を訴えようとしているのかを1番大切にしています。
あと、手紙を受け取った私が、何を感じているのかも大切にしています。』
『吉田さん:我々僧侶ですから、どうしてもお説教したくなる人が多いわけです。
しかし、価値観を押し付けない、それは当然仏教的な価値観も押し付けないで
相手に色んな事を考えて気付いてもらえるような受け止め方をしたいと思っています。』
皆さんが、いろいろなところに本当に気を遣っていることがわかります。
手紙をやりとりすることで、相手にどのような変化があるのか。
藤澤さんと前田さんのお話です。
『藤澤さん:やりとりを続けている中で、
相談者の方が少し安心してくださったのかなと感じることはよくあります。
中には「初めて否定されなかったとか、わかってもらえた気がする」って事を
2通目3通目の手紙に書いてくださる方もいる。』
『前田さん:一緒に考えていくということをずーっと続けていると、
だんだん相談者の手紙が落ち着いてくる、つまり冷静になってくる、
考えそのものも冷静になってくるという印象が強いです。』
最近はメールで簡単に済ます人が多いですが、
「手紙」を書く、つまり自分の気持ちを文字にして、目で見て、
改めて自分の気持ちを確認出来るということが大事なようです。
藤澤さんたち僧侶自身も活動をしてみて、
手紙を読むこと、話を聞くことの難しさを考えさせられることがとても多いそうです。
活動を始める前だったら、
「命を粗末にするなんて!」とすぐにお説教していたところが、
今はまず相手の話をじっくりと聞く。
すると相手の気持ちがわかってくる。
人よりちょっと真面目で、誰かに頼るのが苦手で思い詰めてしまう人へ。
藤澤さんは『あなたの苦しみを今回は私が引き受けます。
だから私が辛くなったら手を貸してくださいね。』という風に
「お互い様」の関係を作っていって欲しいと話していました。
今後の活動について藤澤さんは
『手紙相談は1度始めたからには、もうずっと続けていこう思っています。
実は男性の相談者があまりいないので、
世の中では男性も悩みを持っているんだろうから、
もう少し男性でも悩みを届けやすくするにはどうしたらいいのか
考えていかなくちゃいけないなと思っています。』
と話しています。
藤澤さんが気にかけている「男性」についてですが、
警察庁の調べでは、自殺者は13年連続で年間3万人を越えています。
そして性別では、どの年代も男性が多いんです。
この【自殺対策に取り組む僧侶の会】では、
手紙のやりとり以外に「遺族の集い」も開いています。
身内が自殺したことの辛さを言い出せない遺族の方も
思い切り話が出来る場所がある。
こうした場所があることの大切さを強く感じました。
※問い合わせ先
〒108−0073
東京都港区三田4−8−20
往復書簡事務局
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