「自殺対策」について澤田大樹記者が取材しました。
日本の自殺者の数は1998年から13年連続で年間3万人を
超えているといいますから深刻な問題です。今回は、自殺対策に取り組むNPO自殺対策支援センターライフリンク代表の清水康之さんに話を伺いました。
はじめになぜライフリンクを設立しようと思ったのか伺うと、
「もともとは報道の仕事をしていたんですけど、取材の過程で親を自殺で亡くした子どもと出会い、自殺の問題がいかに深刻なのかということを子供たちを通して教えられて。深刻な問題にもかかわらず社会的対策が遅れていると。対策を進めるためには自分が現場に入って、いろいろな関係者のつなぎ役になっていくのが、一番効率的なのではないかと考え、ライフリンクという団体を立ち上げました」と清水さんは話します。
自殺の現状を伝えるだけでは解決できないと思って、
実際に支援する側に回ったそうなんです。
先ほども述べたように、自殺で亡くなった人の数は1998年から去年まで13年続けて3万人を超えています。この事態を重く見て、政府は去年から毎年3月を自殺対策強化月間と位置づけ、
これに合わせて自殺を予防するための様々な催しが開かれています。
なぜ3月を自殺対策強化月間にしたのか?
その理由について清水さんは、
「3月というのは年度末、決算期ということで、経済的な問題が破裂しやすい時期、或いは仕事を失うといったようなそういう環境の変化が生じやすい時期。こうした時期に日本では自殺が増える傾向にある」と話します。
その背景には中小企業の経営者が資金繰りがうまくいかなくて、
自殺に追い込まれるといったケースが垣間見えます。
ただ、ひとくちに3万人の自殺者と言っても最初に3万人を超えた13年前=1998年と現在では自殺に追い込まれる層は変化してるそうです。清水さんによると自殺する人は7:3で男性が多く、
ある地域では自営業の人が多く自殺するのに対し、別の地域では商工業者が多くなくなっているといったように全体としてみると職業や立場に特徴が見えてくるそうなんです。
13年前は働き盛りでリストラされた人が多かったんですが、その後はリストラではなく、過労で自殺するケースが増え、現在は若い世代での自殺者が増えているそうです。
若い世代の自殺者の増加について清水さんは、不況に加えて
若者の中で生きる意味を持ちづらくなってきていることが背景にあるのでは
ないかと分析していました。
つまり、自殺は個人に原因が中心なのではなく、多くは社会に原因があるということです。
話を聞くうちに失業や借金、うつなど様々な要因によって自殺は起こっているということがわかってきます。自殺を減らしていくための方策はないのか、清水さんはこう話します。
「仕事とか借金とかメンタルとか、いろんな問題、なんでもここにくれば問題解決策を何でも探しますよという受け皿をそれぞれの地域で作っていく。またそうした受け皿があることを周知徹底させていく。そういうことによって、支援策があるにもかかわらず、その存在を知らずに問題解決にたどりつけずに自殺でなくなっていくような方たちを支援できていくんです。」
相談できる場所=「受け皿」を多く作って、そうした「受け皿がある」ということを多くの人に知ってもらうことが大切ということなんですね。
最後に、自殺を減らすためについて我々ができることについて聞きました。
「1つは事実を知ることですね。私達と同じような日常を生きている人たちが日々80人とか90人とか言う数で自殺に追い込まれていっているので、その事実を知るということです。あと1つはあいさつするっていうことですね。あいさつをかわすことによって、あなたの存在を認めてますよということにもなるんで、お互いの存在を確認しあう手段としてのあいさつというものを積極的にやっていくということも自殺対策というか生きる支援のひとつなんじゃないかなって思ってます。」(清水さん)
たかがあいさつと思われるかもしれませんが、あいさつのような日常の小さな関わり合いが死を選ばないことにつながっていくのかもしれません。
このほかにも身近な人を自殺でなくした人の心の傷も大きな問題だと清水さんは指摘していました。年間3万人を超える自殺者。そしてそのご家族、知り合いの人数を考えるとこの問題の大きさを改めて考えさせられます。
関連情報・お問い合わせ先
- 自殺対策支援センターライフリンク
http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html