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「裁判員に対するメンタルケアの現状」
放送日:2011年01月22日
去年からスタートした裁判員制度。
最高裁判所によると1年間で、およそ5900人に
1人が裁判員に選ばれています。
裁判員が担当する裁判は、放火や殺人など重大な
事件であり、精神的な負担が予想されます。
そこで、裁判員経験者へのメンタルケアの現状を
永井ディレクターが取材しました。
裁判員制度の情報を発信している一般社団法人・
裁判員ネットの代表で、弁護士の大城聡さんは
「人生の中で一度だけ関わる判決であり、
死刑求刑事件に限らなくても、裁判員は重い
責任をもって判決に臨んでいるので、
心理的負担は、事件の難しさにかかわらず、
非常に大きいのではないか。」と話しました。
判決を下す重み。法廷で目の当たりにする
現場の証拠写真や、評議の模様などを周りの人に
話せない守秘義務による孤立感などもあります。
ただし、守秘義務といっても、傍聴人がいる法廷
での内容は、周りに話しても問題ありませんが、
「自分は○○な判決と思ったけど、
多数決で違う判決になった」など
「裁判官や裁判員との話し合いの内容」
については守秘義務にかかります。
そこで、この「話していい所と、いけない所の線引き」
を誤解して裁判については一切話せないと思い、
誰にも打ち明けられずにストレスになるケースも
あるので、その線引きをしっかり理解していく
ことも大切です。
裁判員のメンタルケアは、無料のカウンセリングを
5回まで受けられます。
このケアについて、大城さんは
「5回の回数制限では少ないのでは?
と専門家からきいたことはあります。
裁判所だけが裁判員の心のケアをするのではなく、
市民の中で裁判員経験者同士が、交流する
機会を作ったり、実際に法廷を見たり、裁判員
経験者の話をきいて、裁判員になる前に心の準備を
するなど、市民社会全体で裁判員制度の事を
考えていくことが大切です。」
と話しました。
そして、大城さんが代表をしている裁判員ネットは、
裁判員経験者の交流の場を設ける
「裁判員経験者ネットワーク」の呼びかけ団体と
なっています。
現在、20人の裁判員経験者が参加していて、
ある日の交流会で、Aさんが
「自分が関わった裁判の被告人が、ちゃんと
更生できているのかなどその後が気になっている」
と発言したところ、他の経験者の方々も
「実は私も同じような事を考えていた」と答えて、
Aさんは、
「こう思っているのは自分だけかと思っていたけど
同じ思いの人がいてよかった」と語ったそうです。
経験者にしかわからない悩みについて語り合う事が、
メンタルケアのひとつになっているようです。
今後、裁判員のメンタルケアについて
必要なものについて大城さんは
「臨床心理士と、裁判中も何かあれば連絡が
とれる様にするなどのケアを今後考えていく
べきと思っています。」と話しました。
市民みずからが、司法に参加する裁判員制度。
私たちも、いつ選ばれるかわかりませんが、
この精神的負担をどうするか。今後の見直しで
検討されるべき事だと思いました。
※今回取材した団体は、インターネット検索サイトで
「裁判員ネット」
「裁判員経験者ネットワーク」
を入力すると、活動の詳細をご覧になれます。
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