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「思い出」で認知症ケア
放送日:2010年10月09日
担当山崎景子
ある紙芝居の様子を取材してきました。
★こんにちは〜。恒例の紙芝居を読みに来ました。今日のお話は「黄金バット」。皆さんご存知ですか?今日はその黄金バット懐かしい話しさせて頂こうと思います。始まり始まり〜(拍子木)黄金バッド、ナチスドイツの科学者ナゾーはベルリンが、、
「黄金バット」といえば、昭和初期の紙芝居の中でも有名な作品ですよね。最近の子供は「黄金バット」なんて知らないんじゃないかなとおもったんですけど、大丈夫でした。この黄金バッドの紙芝居の観客、平均年齢が70代から80代の高齢者なんですよ。
実は「病院」で行われたんですね。
千葉県・若葉区にある高齢者医療の専門病院「総泉(そうせん)病院」での様子です。
「娯楽」として紙芝居を楽しもうというのもあるんですが、病院ですから、ちゃんと「意味」があって紙芝居です。院長の高野喜久雄(たかのきくお)さんのお話では、、
★古いものを見ながら昔を思い出す、回想法の一部を行っているんです。認知症のトレーニングの中に、古いことを思い出すことによって、ドンドン展開していくわけです。逆に新しいことを引き出すきっかけになる。脳の活動が、全体的に活性化されてくるということですね。
懐かしいものに触れて、認知症のケアをしようというわけなんです。懐かしい「物」とか「風景」をみると「このときはこんなことがあったね、そういえば、あんなことしたな〜」と忘れていた思い出がどんどん引き出されるんですね。そうやって脳を活性化させるのが、この紙芝居の狙いなんです。
この他にも、紙芝居が読まれた1階のロビーには「思い出ミュージアム」という「昭和の30年代の街並み」が再現されています。
これも昔のことを思い出してもらって、脳の活性化をさせようと言う事なんですけど、「羽子板・メンコ、ブリキのおもちゃ」などが並ぶ「駄菓屋」があったり、「足踏みミシン、ちゃぶ台、」などの日用品がある畳の部屋があったり、「赤い丸型ポスト」がある郵便局があったり、などなど昭和の懐かしい物が所狭しと並んでいます。
先程聞いて頂いた紙芝居のときは、職員がハッピを着て、自転車を引いてやってきて、荷台に紙芝居を立てて、拍子木を鳴らすと、当時そのものなんですね。
また懐かしい、手作りのべっこう飴が配られて、舐めながらの紙芝居を見ます。「見る」だけじゃなくて、懐かしい味だったり、音だったり、こういった感覚も刺激するので、より一層の認知症ケアの効果が期待できそうですよね。
月に一回の紙芝居の開催以外でも、もちろん出入り自由。おもちゃなど、すべて、触れたり、遊んだりすることができるので、ふらっと遊びに来て、思い出に浸っている人もいるし、患者さんどうしで思い出話に花を咲かせている人も多いそうです。実際に患者さんに話を聞くと、、、
★黄金バッド怖かったよ〜。良かった、素晴らしい。思い出しますね。若かった頃。あやとりもやったし、お手玉もやったし、昔を思い出すから、楽しいですよ。
★懐かしいと思いました。子供の頃使いましたから、コタツなんかもありましたし、家族思い出しますね。若返ります。ふふ。
★紙芝居やさん、来るの。自転車で。足踏みミシン、懐かしかったね、最初に買ったのあれなの。今はないですよね。家にあったなって。
懐かしいものに見たり、触れた後のほうが、格段に元気に、饒舌になっていました。
患者さんのために作った「思い出ミュージアム」なんですが、院長の高野さんは、意外なところにも「効果があった」と話しています。
★職員の人が昔のことを知らないんですよ。ノラクロと言うマンガがあるんですね、今、若い人はノラクロというマンガを知らない。ユニクロと同じと思う人もいるので、違うぞと勉強してもらう場でもあります。新しく入った方も、ヘルパーさんもそうですけど、事務の方もですね、思い出ミュージアムの店番をしてもらって、その人がどういう事を考えているか、古い人の考え方とか、そのころの思い出なんかを聞いたりなんかすることによって、楽しいトレーニングとしてもこれは使われるんじゃないかと思います。まさしく職員を育てる場です。
若い職員のトレーニングの場にもなっているんですね。職員は昔のことを勉強できて、コミュニケーション能力も身につきますし、患者さんは昔のことを聞いてもらえてうれしいし、脳の活性化にも繋がる。
「まさに一石二鳥・お互いに相乗効果が生まれる場所なんですよ。」と高野さんは話していました。
昔のことも「思い出」ですけど、こうしている「今」だって、「これからの思い出」になりますよね。そういう意味でも「今」というのが患者さんにとって、とても大切なんだなと思いました。
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