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「難病患者の夢を叶えた、ギター演奏マシン」
放送日:2010年08月28日
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舩後さんにセンサーをつける山田さん |
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ギターお披露目ライブ |
難病で体をほとんど動かせない人が
ギターを演奏できる、というマシンが
完成したので永井洋満ディレクターが取材
してきました。
マシンを開発したのは、神奈川県藤沢市の
湘南工科大学で非常勤助手を勤める
舩後靖彦(ふなご・やすひこ)さんと、
4年生の山田雅彦(やまだ・まさひこ)さん。
舩後さんは、ALS=筋萎縮性側索硬化症
という、全身の運動機能が急速に衰える
難病の患者ですが、大学の助手として、
学生と一緒に、様々なマシンを開発してきました。
今回は、発病前はギターが趣味だったという
舩後さんの「もう一度ギターを弾きたい」
という夢を叶えようとしました。
身体が、ほとんど動かなく、寝たきりで
人工呼吸器に頼っている舩後さんですが、
「頬や、口元、あご」などはわずかに動かせます。
そこに山田さんが、マッチ棒くらいの大きさの
センサーをつけてゆきます。
そして、「ほお、口元、あご」の3つの
センサーが、ギターの「C、F、G」の
和音にそれぞれ対応するようになっていて、
舩後さんは、「ほお、口元、あご」の
どこかを意識してピクっと動かすことで、
ギターにつながれたアームが、コードを押さえて、
弦を弾いて3つの和音を鳴らし分けます。
ついにマシンは完成し、8月7日に千葉市内の
カフェで舩後さんが演奏を披露しました。
普段、舩後さんの身の回りのケアをしている
人や友人たちが、バンドとしてサポートしました。
そして、この日のために舩後さんが作詞した
「それでも彼女は」という曲を一緒に演奏しました。
曲は、舩後さんのギターで始まりました。
「夢があるから 負けられない 行くしかない」
そんな思いが込められた歌詞で、前向きになれる、
元気をもらえる歌でした。
このマシンを開発した山田さんは、舩後さんの
横に立って、譜面を見せる役をつとめていましたが、
1年がかりでマシンを完成させた嬉しさからか、
涙ぐむ瞬間もありました。
山田さんは
「待ちに待ってた、それが実現でしてうれしいです。
途中涙をぬぐっていたのは、去年のことが、
いろいろあって、試行錯誤の映像が頭の中で
流れていたからです。」
と開発の苦労が報われた瞬間を振り返りました。
一方、「もう一度ギターを弾きたい」
という夢をかなえた舩後さんは、
「とても素晴らしいギターです。これを使って、
ギターを弾き続けて行きたいです」
という感想を演奏後に発表しました。
このマシンの開発を指導した湘南工科大学の
水谷光教授は、
「今回のものは、生活に直接必要なものでは
ないのですけど患者さん、あるいは、障害を
もった方々が生活していくにあたって、
ただ生きていればいいというわけではなくて、
有意義に生きていくという事が必要だと思います。
高いQOLを得るための器具を考えていきたい」
と語りました。
QOL・「クオリティー・オブ・ライフ」。
日常生活のサポートももちろん大事ですが、
より生き生きと暮らせるための
「福祉器具の開発」がこれからは
重要になるということでした。
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