 |
真岡市内にあるレストラン「らそす」。「らそす」にはポルトガル語で「絆(きずな)」という意味がある |
 |
メニューを持つ山口州男さん |
 |
ケールやビーツを使った揚げ餃子に、マンジョカ(芋)のフライドポテト風 |
 |
「らそす」では山口さんが日系ブラジル人と一緒に作っている野菜も直売されている |
栃木県真岡市には自動車関連を中心とした工業団地がいくつもあり、日系ブラジル人や日系ペルー人などの外国人労働者が3千人以上住んでいます。不況で雇用情勢が悪化する中、ブラジルでよく食べられている野菜を作って雇用を生みだそう、という取り組みを崎山敏也記者が取材しました。
ケールやビーツ、リーフレタスやルッコラといった15種類以上の野菜を作っているのは、人材派遣会社「友和」を経営する山口州男さんです。不況になる前、山口さんの会社は、約300人の外国人を工場に派遣していました。しかし、リーマンショック後、派遣先は激減し、今は5、60人という感じです。そこで、1年半ほど前からブラジルの野菜を作り、スーパーや弁当屋さんに卸しています。
日系人が買っていくので、採算はぎりぎりというところですが、ブラジルの野菜はまだまだ日本人にはだ馴染みがありません。日本人にもブラジル野菜の良さを知ってもらい、販路を広げて、雇用の場を増やそうと、今年の3月には真岡市内にレストラン「らそす」をオープンしました。「らそす」はポルトガル語で「絆」という意味です。
「らそす」のメニューの目玉はケールやビーツで作った水餃子や揚げ餃子です。餃子の皮には、マンジョカという芋の粉を練り込んでいます。また、様々な野菜を使った新鮮なサラダも好評です。野菜は店で直売もしています。
そして、野菜を作る農場だけでなく、レストランでも日系人が働いています。サラダの係だという女性は姉や弟と一緒に日本に働きに来ていましたが、最近は仕事が見つからず、ブラジルに帰った人もいるそうです。「ここで働くのは楽しいですし、お客さんが来るのは嬉しいです。ブラジルの野菜を使ったサラダを皆さん、食べてください」と崎山記者の取材に答えていました。
外国人労働者は何かあると真っ先に仕事を切られます。再就職も、日本語の問題があって、不利な状況です。リーマンショックの後、山口さんも色々と悩みました。その時、お互いに助け合うことがほんとに必要なんだな、と感じたそうです。一緒に働いてきた人たちとの「絆」を切りたくない、という気持ちを「らそす」というレストランの名前に込めているんです。
真岡市内には山口さんの妻の由恵さんが代表をつとめる「チーム絆」というボランティア団体があります。
不況の影響で、市内にあったブラジル人学校は閉鎖に追い込まれました。学校へ通っていない外国人の子供や、公立学校に通っていても、日本語の意思疎通がまだ難しく、放課後に学童保育へ通えない子供達の「居場所」を作る活動も始めたところです。居場所を運営してみて、由恵さんは「放課後の時間以外は、地域の大人の居場所にもなっています。そこに行けば、何かができる、という、みんなが集まれる場所になればいいな、と思っています」と話していました。
由恵さんはある時、日系人の子供に「何がほしい」と聞くと、「お母さんに仕事を下さい」という言葉が帰ってきたそうです。
不況の中、「仕事」を通した人のつながり、様々な形での支え合いが、ここでは生まれ始めたところのようです。