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母親の一人、鹿沼さつきさんから作業の説明を受ける岡本キャスター |
サッカーJ1・「大宮アルディージャ」のユニホームをクリーニングしているのは埼玉県富士見市のNPO法人「コットンドリーム」。重い身体障害と知的障害のある15歳から20歳の男女5人とそのお母さん達です。
子供たちがどんな風に仕事をしているのか、岡本祥子・情報キャスターが、新座市にある株式会社モビメントの工場を訪れました。
機械で洗って、乾燥するまではお母さんたちとボランティアが担当。ボランティアは近くにある文京学院大学で福祉を学ぶ学生たちです。たたんで、ビニール袋に詰める作業は子供たちの担当です。
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紐を引いて、ユニホームをたたむ |
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パッキングの機械のレバーを動かす |
子供たちは、特別支援学校の休みの日や、デイサービスのリハビリの合間をぬって、週2日は工場に来て、仕事をしています。岡本キャスターが訪れた時は、その一人、鹿沼諒くんが、ボランティアの男性と一緒に袋詰めの作業をしていました。
机の上には大宮アルディージャのチームカラーになっているオレンジと紺のユニホームがきれいにたたんで置いてあります。ボランティアの男性が、そのユニホームとビニール袋を機械にセット。諒くんが麻痺のある手を動かしてレバーを引くと、袋の端が閉じて、完了です。サポートの男性と息を合わせ、ゆっくりですが着実にユニホームを袋に詰めて行きます。
サポートの男性は身体の麻痺がある部分を考えて、どちらの手を使うか、押し引きどちらの動作がやりやすいか、などの工夫をしています。母親の鹿沼さつきさんは「まだ完全には作業を覚えていませんが、気持ちさえ向けばちゃんとできると思います。サポートの方が直さなくてはいけないこともありますが、本人達は仕事をしている気持ちにとてもなっているんです」と話します。
お母さんたちがNPO法人「コットンドリーム」を立ち上げたのは3年前。将来、自分たちがいなくなっても、子供たちが自立して生活する場を作って行きたい、と考えたからです。何か仕事を、と考えていた時、アルディージャのユニホームのクリーニングを引き受けていたモビメントの桶本義孝会長がそれを聞き、「コットンドリーム」に委託することになったんです。
取材した日は、子供たち5人とそのお母さん全員が勢ぞろいして、ボランティアの学生達も一緒に和気藹々の雰囲気でした。
原誠君に話を聞くと、「タオルをたたんだりするのは面白いです。好きなチームはアルディージャ」という言葉が返ってきました。収入の中から小遣いとしてもらったお金で、大好きなEXILEのCDを買ったということです。お母さんの原真紀子さんは「最初はちょっと心配だったんですけど、すごく楽しんでいるというのが伝わってきます」と話します。
また、榎本雄斗君のお母さんの榎本ゆき江さんは「学校を卒業してからが心配だったので、来れる場所があるということがとても幸せです。ニコニコしている姿を見ると私も安心します」と話していました。
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「コットンドリーム」で働く5人のメンバーが勢揃い |
モビメントの工場は住宅街の一角にありますが、工場でほかの作業をしている人たちや近所の人も気軽に声をかけてくれます。2010年のお正月はモビメントの新年会にも招待されたそうです。
アルディージャの試合もテレビで見ています。鹿沼さつきさんは「自分たちの子供や
自分たちが洗ったユニフォームを着て、テレビの中で駆けずり回っている選手たちを最初に観たときは、涙が出るほど感動しました。それまでにない喜びっていう感じです」と話します。「コットンドリーム」での仕事を通じて、社会との様々なつながりが生まれてきたようです。
アルディージャの選手が工場を訪れたこともあります。その時、鹿沼さんは
「この子達はずっと、周りから支えられる存在だったけど、クリーニングの仕事を通して、
選手たちを支える存在にしていただけました」と伝えたそうです。
「コットンドリーム」の目標は、子供たちが一緒に暮らせるグループホームの建設です。将来への夢や希望が少しずつ見えてきました。
スポーツの現場に障害者が関わる場がある、ということも岡本キャスターの新たな発見でした。