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パンフレットとDVD |
視覚と聴覚の両方に障害がある「盲ろう者」は全国に2万3千ほどいると推計されています。目と耳の障害を併せ持つため、コミュニケーションや移動する時などに困難が生じます。一人では思うような行動や意思伝達ができず、社会から孤立することもあります。視覚障害だけ、聴覚障害だけ、とは違った独自の支援が必要です。
去年の5月、全国で初めての盲ろう者専門の施設として、自立と社会参加を支援する「東京都盲ろう者支援センター」が東京・台東区内に開設されました。
そして、センターを運営している「東京盲ろう者友の会」がこのほど、広報・啓発のためのツールとして、「知ってください 盲ろうについて」というタイトルのパンフレットを作りました。(同じ内容のDVDとウェブサイトもあります。)
2010年の4月に開かれた、広報・啓発ツールの完成披露の発表会を崎山敏也記者が取材しました。センター長の前田晃秀さんによりますと、盲ろうについて1冊でわかるもの、そして手に取りやすく、わかりやすいものにしようと心がけたということです。そして、「盲ろうについてのイメージを持ってもらう」ためのツールだということです。
例えば、パンフレットの表紙には、盲ろう者がコミュニケーションをとるための3つの方法が写真で載っています。手のひらに指で字を書いて伝える「手書き文字」。触れて伝える手話、「触手話」。そして、指を点字の点に見立ててたたき、伝える「指点字」。目と耳、二つの障害の程度や、どちらの障害が先だったか、によって、様々な方法があるんです。
また、パンフレットでは、積極的に社会参加している盲ろう者の声を紹介しています。マッサージ院を営んでいる方、リハビリテーションの専門学校の講師の方、手話サークルで教えている方、と様々です。
また、盲ろう者との接し方についてもわかりやすく説明されています。
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「知ってください 盲ろうについて」の発表会であいさつする東京都盲ろう者友の会の山岸康子理事長 |
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「盲ろう者が必要な支援を受けることができるよう周囲の人が協力して欲しい」と訴える東京大学の福島智教授。 |
パンフレットには東京都盲ろう者支援センターの機能や盲ろう者への支援についても載っています。例えば、「通訳・介助者」。情報を伝えながら移動を助け、盲ろう者の日常生活をサポートします。
しかし、例えば東京都内の場合、820人ほどの盲ろう者のうち、「通訳・介助者」の事業を利用しているのは1割程度です。盲ろう者は新聞もテレビもラジオも利用できず、自分から情報を探すことが難しいため、「必要としている支援がある」、という情報も盲ろう者本人の元に届いていない、届きにくい現状があるんです。
発表会には盲ろう者で、東京大学先端科学技術センター教授の福島智さんも出席しました。福島さんは地震などの災害にたとえ、「光も音もない世界にいる盲ろう者は常に災害にあっているような状態なんです」と話します。そして、「盲ろう者はある意味で、目に見えない瓦礫に埋もれてしまっていて、コミュニケーションという食べ物とか水が供給されない状況で生きています。周りの人たちがパンフレットやDVDを見て、もしかしたら、家に閉じこもっているあの人は盲ろう者で、コミュニケーションが難しくて大変なのかもしれない、ということに思い至ってほしいんです」と訴えていました。
「東京盲ろう者友の会」では、パンフレットやDVDを行政機関や障害者団体、病院などに配るほか、ウェブサイトも通じて、広く盲ろう者のことを知ってもらおうと考えています。盲ろう者が身近にいる場合、ぜひ、パンフレットやウェブサイトに載っている様々な情報を伝えて欲しい、ということでした。
関連情報・お問い合わせ先
- 東京盲ろう者友の会(東京都盲ろう者支援センター)
http://www.tokyo-db.or.jp/