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診療所のパソコンを前に、山崎キャスターにシステムの説明をする堂垂院長 |
一人暮らしの高齢者を見守る方法は色々とあります。近所の人同士で声を掛け合うのも一つですし、電気やガス、電気ポットの使用状況を見て、といった機械を使う方法もあります。
その一つ、自宅の電話を使った新しいシステムが、千葉県松戸市で開発されたということで、山崎景子・情報キャスターが取材しました。この方法、「一人暮らしあんしん電話システム」といいます。
「一人暮らしあんしん電話システム」を利用しているのは、松戸市の「どうたれ内科診療所」に通院している約80人の一人暮らしの高齢者です。
見守るための電話は高齢者の自宅に週一回、自動的にかかってきます。受話器を取ると、自動のアナウンスが流れます。それに従って、「元気だ」という場合は、プッシュホンで「1」を押します。「数日中に連絡が欲しい」という場合は「2」、「早めに連絡が欲しい」という場合は「3」を押します。利用する高齢者に費用の負担はありません。
押した結果は、診療所にあるパソコンの画面に表示され、一目でわかるようになっています。
4月の初め、山崎キャスターが、診療所から車で10分くらいの団地に住む77歳の男性の自宅にお邪魔しました。
電話はいつも火曜日の朝にかかってきます。受話器をとると、男性は「はい、はい」とうなづきながら、「元気だ」という「1」を押しました。すると、診療所の堂垂伸治院長の声で、「季節の変わり目は、風邪に注意してください」といったメッセージが流れます。
男性は電話を待っているというよりは、普通にかかってきた電話に出ているような感じでした。普段診てもらっている院長の声なので、「はいはい、とつい返事の声も出てしまうんだよ」と嬉しそうに話していました。
2年間利用した感想を聞くと、「なんかほっとするというか、守られているという感じでしょう。実際には姿は見えないんですけど、どこからか見てくださる感じはします」と答えていました。
どうたれ内科診療所では最初、看護師が月一回、直接電話をかけて、安否確認をしてみました。しかし、「絶対にその時間にいないといけない気がして、面倒だ」とか「かえって気をつかう」といった声があがったそうです。かける看護師さんも大変です。そこで、東京の工学院大学の菅村研究室と共同で、この「一人暮らしあんしん電話システム」を開発することになったんです。
「2」や「3」が押された場合は、直接電話して様子を聞き、アドバイスをしたり、薬を出したり。状況によっては医師が自宅に往診に行ったり、救急車を手配したこともあります。
電話に出ない場合は、次の日の同じ時間にまた自動でかけ、それでも出なければ直接電話をするそうです。
堂垂院長は「淡い関係というのが一番のポイントです。この程度の関係だから、患者さんも大丈夫だから答えておこうとなるし、ちょっと体調がおかしいから、先生やスタッフと話をしたいと、気軽に対応できるんです」と話します。
定期的に、さりげなく、見守るところが特徴のようです。
民生委員が訪問したり、新聞が郵便受けにたまっていないか、近所の人が気にしたりと、この地域には他にも様々な見守りのネットワークがあります。
堂垂院長は「これだけでは完全な見守りシステムではありません。見守りネットワークの中でうまく使ってもらって、その余力を本当に手間がかかる人、例えば認知症の方のケアをすることに振り分けていけばいい、と思っています。そうすれば、地域全体が安心して住める街づくりに役立つのではないか、と期待しています」と話していました。
「一人暮らしあんしん電話システム」は、地域の力を強くするための有効なツールのようです。
このシステムは株式会社「数理技研」が「おたずねフォン」という商品名で製品化しています。病院や地域包括支援センターで役立ててもらえれば、と堂垂院長は話していました。