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若狭さんにインタビューする中村キャスター |
親の虐待や貧困など様々な事情で保護が必要な子供を受け入れているのが児童養護施設や里親です。ただ、児童養護施設は不足していますし、里親もなかなか増えないのが現状です。
そこで、里親と同じような役割が期待されている「ファミリーホーム」という国の新しい制度が2009年に始まりました。「ファミリーホーム」は一般の家庭の中で5,6人の子供を預かり、自宅で育てるというもので、施設と里親の中間のような形です。
実際にどういう風に運営されているのか、全国に50以上ある「ファミリーホーム」の一つ、東京・荒川区の若狭一廣さんのお宅「陽気ぐらしの家 わかさ」を中村愛美・情報キャスターが取材しました。
この制度が始まったのは2009年ですが、若狭さんは15年ほど前から、養子縁組を前提としない「養育里親」として子供を預かってきました。その数は合わせて20人になります。
取材した時点では、若狭さんのお宅には若狭さんご夫妻、若狭さんのご両親、そして若狭さんの子供が2人。「ファミリーホーム」として下は4歳から上は高校3年生までの5人を預かっています。それに、一昨年高校を卒業した元「里子」が1人、一緒に住んでいました。
取材した日は、ちょうど夕ご飯の時間帯で、若狭さんや奥さんは忙しそうにしながらも、食卓を囲んで、子供たちと楽しそうに話していました。
子供たちはそれぞれ、ここに来る前に様々な事情を抱えています。若狭さんの話では、例えば、ここに来て1年は一言もしゃべらなかった子もいますし、大人を全く信用していなかった子もいるそうです。「根気よく色々なケアをしますが、ちゃんと時間をかければうち解けてくれて、かわいい息子や娘というような間柄になるんです」と若狭さんは話します。ただ時々、「自分はなぜ実の親と暮らせないの」といった疑問や不安が湧く時はあります。「そういった時は、我々もそれを丸ごと受け止めて、抱きしめてあげるしか方法はないんですけどね」と若狭さんは話します。
里親と同じ家庭的な環境で、5〜6人と、里親より多くの子供を育てられるのが、ファミリーホームの利点です。若狭さんは、子供達に規則正しい生活をさせることだけは心がけています。でも、「それ以外は、一緒にご飯を食べて、笑って、一緒に泣く。たいしたことではなく、なんの変哲もないことをやっているんですよ」と話していました。
ただ普通のことといっても、洗濯や料理と言った家事の量は子供の人数分だけあるから大変です。そこで、国の「ファミリーホーム」制度では、子供を世話する「養育者」を3人以上置くことを義務づけました。受け入れ家庭の夫婦だけで足りない部分は外からスタッフを雇ってもらおうというわけです。その分、国からの費用の支援は、充実したものになっていて、若狭さんもそのお金で、家事を手伝うスタッフを1人お願いしています。
「家事に使っていた時間を、一緒に絵本を読んであげるとか、大きな子供だったら一緒に勉強を教えるとか、子供達と向き合う時間に使えるようになったんです」と話していました。
そして、若狭さんと子供たちとの付き合いは養育の期限である18歳になってからも続いています。大人になった元「里子」たちは近所に住んでいて、よく遊びに来るそうです。幼稚園の送り迎えをしてもらったり、ご飯を食べに来たら一緒に片付けをしてくれるそうです。「私も頼って、彼女たちもここを頼ってきてくれる」と奥さんの佐和子さんは話します。若狭さんは「要養護児童は帰るところがない、という不安を持っている子が多いんです。ファミリーホームはいつでも帰って来られる場所、実家のような場所なんですよ」と話していました。
取材した日も、部屋の中に何人いるかわからない感じで、ボール遊びをする男の子達もいれば、元里子の女性は自分の子供も連れてきて、遊ばせながら、おしゃべりを楽しんだりと、とっても賑やかでした。中村キャスターもすっかり家族の一員になって楽しい時間を過ごすことができた取材でした。