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「幻聴妄想かるた」と、説明が書かれた冊子「露地」 |
2009年12月の下旬、東京・世田谷区の文化生活情報センターで、精神障害者共同作業所「ハーモニー」の展示会が開かれました。統合失調症やうつ病といった「こころの病」のことや、ハーモニーはどういう場所なのか、どういう活動をしているのか知ってもらおうというものです。
中村愛美・情報キャスターが取材したのは「かるた大会」。ハーモニーの利用者とスタッフが一緒になって作った「幻聴妄想かるた」で遊びました。
「にわとりになった弟と親父」「眠れない日が続くと聞こえてくるジェットエンジン音」。読み手はまず、句の内容や背景を説明してから、こういう「読み句」を読み上げ、参加者が、かるたを取り合います。
参加者の一人は「自分にも音が気になって辛い夜とかあります。こうやって、障害のある人がオープンに語ってくれることで、度合いは違うけれども、入り口の部分はわかるなって感じがします」と話していました。
説明の元になっているのは「幻聴妄想かるた」に付いている120ページの冊子「露地」です。遊び方や句の内容の説明だけでなく、かるたが作られるまでの経緯、精神障害についての解説、句の内容を提供した利用者一人一人の生い立ち、障害の状況などが載っています。
ハーモニーでは、週一回の利用者同士のミーティングで、お互いの苦労や体験を話し合って、対処法などを考えています。その時出てきた体験を、何か「形」にして広めれば、精神障害への理解につながり、精神障害者が地域で暮らしやすくなるのでは、と考えたのがきっかけだということです。50音あるので、50のエピソードが載せられる、ということで、かるたを作ったところ、外部の人からのアドバイスもあり、冊子を付けて説明を加えることにしたそうです。
「露地」をつけたことで「すごく体験が伝わってくる」と評判になり、看護学校や大学の医学部などから購入の注文が相次いでいます。
ハーモニーのスタッフの話では、利用者の中からは「自分の病気のことを人に話すことにあまり抵抗感がなくなった」という発言も出てきているそうです。
また最近では、このかるたはどういう人の話なんだろうか、ハーモニーはどんな場所なのか、という問い合わせも増えてきています。ハーモニーの施設長、新澤克憲さんは、「ハーモニーの利用者は、安心して行ける場所があって、仲間がいるから、毎日安心して地域で生活できるんだということを、このかるたをきっかけに知ってほしい」と話していました。
「こころの病」を抱えながら地域で生活する精神障害者は孤立しがちです。そういう人たちが安心して過ごせる居場所として、また社会に復帰するためのステップとなる場所として、「ハーモニーのような場所が地域に必要だ」ということをあらためて感じた中村キャスターでした。
関連情報・お問い合わせ先
- 精神障害者共同作業所「ハーモニー」
http://www.geocities.jp/harmony_setagaya/