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チャリティコンサートの会場で。 左からウインク理事長の新川てるえさん、橋本扶未子さん、橋本英一さん。 |
崎山敏也記者が今回取材したのは、シングルマザーの支援に主に取り組んできたNPO法人「Wink」です。生活に困っているシングルマザーが安く住める「共同住宅」の提供や、離婚した父親がなかなか払わない現状がある「養育費」の問題などに10年以上取り組んできた。
その「ウインク」が2009年の12月、東京・目黒区のレストランでクリスマスチャリティコンサートを開ました。ウインクの活動を応援するアーティスト、橋本英一さんのミニコンサートなどの後、チャリティの趣旨が説明されました。
ウインクのスタッフ、新川明日菜さんは「これまで一人親家庭の支援を通して、子供の支援を行ってきました。しかし、子供の直接支援も行いたくて、『GOTOちゃれんじ子ども基金』を設立したんです」と話します。ウインクではこれまでも「ママの夢をかなえよう」と、「GOTOちゃれんじ」というイベントや様々な取り組みをしてきましたが、今度は「子供の夢をかなえよう」と若いスタッフが考えたということです。
2009年に初めて政府が発表した「相対的貧困率」。2007年の貧困率は15,7%でしたが、「一人親世帯」は54,3%です。他にも、「平均年収は一般家庭の3割」という調査もあります。親の経済力の差が教育や学力の差につながり、子供が将来の夢をあきらめてしまう。すると不利な就職しかできず、また貧困家庭が生まれてしまう。そういう「貧困の連鎖」をとめるためにも、チャリティイベントやインターネットを通じて、「子供の夢を応援する基金」を募っていくということです。
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基金の説明をする新川明日菜さん。 |
今回のチャリティコンサートの収益は「ガクボラ」という活動に寄付されました。「学生のボランティア」で「ガクボラ」です。一人親家庭や養護施設などの、学ぶことが難しい状況の子供達をサポートしようという活動です。
コンサートの会場にはガクボラに登録している大学1年生の橋本扶未子さんがいました。橋本さんは「自分のように毎日笑顔で楽しく過ごせている、というわけではない子供がいる現状に前から関心は持っていました。ただ、海外の現状ばかりを見ていたんですが、大学の授業や新聞報道などで、日本の中にも、自分が知らないところにそういう子供達がいるんだ、ということを知ったのがきっかけです」と話します。
ガクボラを運営するNPO法人「キッズドア」理事長の渡辺由美子さんの話では、海外の子供の支援には、大学生ボランティアが毎年何万人規模で行っています。ツアーに参加するような感覚で窓口もしっかりあります。しかし、国内では、学生が問題に気づいても、どこに行ったらいいのか、わかりませn。児童養護施設に突然一人でいくわけにもいきません。そこで、ボランティアをしたい学生達と、支援が必要な子供達の「つなぎ役」になろうということなんです。
2009年から始まった「ガクボラ」ですが、取材の時は、40人ほどの大学生が登録していて、児童養護施設の子供の家庭教師として勉強を教えたりしています。また、子供にとっては、勉強だけが「学び」ではありません。「学童保育」の子供達の遊び相手をつとめたこともあるという橋本さんは「パワフルな小学生達に圧倒されましたけど、この笑顔をもっと作っていきたいな、というのをすごく感じました」と話していました。橋本さんはこのほか、小学生が無料で参加できるキャンプの企画作りにも参加したそうです。
ガクボラではこのほか、「ウインク」のようなNPOと連携して、「一人親家庭」の中学三年生の受験に向けた勉強会も開く予定です。仕事が忙しくて勉強の面倒を見る余裕もなく、また金銭的に、塾にも通わせられない親に代わって役割を果たそうというものです。
「こども手当」や「公立高校の無償化」など、政策も動き出してはいますが、貧困家庭への支援は十分とはいえない状況です。「ウインク」や「ガクボラ」のような様々なNPOや大学生達など、民間の連携が今後どう広がるか、政策がそれを後押しできる形になるか、取材した崎山記者は注目しています。(写真はいずれもウインク提供)
関連情報・お問い合わせ先
- NPO法人Wink
http://www.npo-wink.org/
- 「ガクボラ」
http://www.kidsdoor.net/gakubora/