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「ガルーダ・サポーターズ」では、ニュースレターの発行や電話相談など様々な支援活動を行っている。 |
2008年の8月、EPA=経済連携協定に基づいて、インドネシアから看護師と介護福祉士の候補者約200人が来日、現場で働きながら、資格をとるための勉強を続けています。3〜4年以内に国家試験に合格すれば、その後も日本で働くことができますが、様々な制度の問題点がすでに指摘されています。
波岡陽子・情報キャスターが取材したのは、候補者達をサポートするグループ「ガルーダ・サポーターズ」です。メンバーは医療や介護の関係者だけでなく、企業の関係者や大学生、在日のインドネシア人など様々です。
看護師で事務局長の宮崎和加子さんは、EPAのやり方に対して色々な意見があることを前提に、「日本は良い国だな、と思ってもらうことが国際交流の基本ですし、言葉だけでなく、サポートしながら発言していくことが、より説得力のある制度の改善につながると思うんです」と話します。
「ガルーダ・サポーターズ」の活動の一つが、インドネシア語でできる電話相談です。担当しているのは、インドネシア語通訳の丹マウラニさん。
マウラニさんによりますと、相談を始めた頃は、ちょっとした生活の困りごとや相談ごとがある一方で、「給料が言われていたのよりも少ない」とか、「掃除やおむつ交換といった看護師の仕事ではない事をさせられた」といった不満や深刻な悩みが多かったそうです。
その原因は、保険料などの「天引き」について、事前に十分な説明を受けていなかったことや看護という仕事への考え方が日本とは違うことなどが背景にあったようです。
マウラニさんは「仕事の悩み、不満、これからの不安とか、電話口でみんな話してくれるんですが、聞くのは結構辛かったです。それに、私から解決方法はあげられないので、とにかく、とことん聞いてあげて、励ます。そして、なるべく自分で解決できるよう手助けしました」と話します。自分の言葉で相談できるとやはり安心なようで、マウラニさんから電話をかけてみると、悩みや不満が次々に出てきて、長い電話になってしまうこともよくあったそうです。
ただ、こういう状況は2009年の5月、6月頃までで、その後は日本語についての質問や相談が圧倒的に多くなったそうです。日常会話もまだ完全とはいえない段階ですが、候補者たちは、普通の日本人でもふだん耳慣れない介護や医療の用語も勉強しなくてはいけません。法律用語もある国家試験は、日本人と全く同じ条件で受けます。
専門用語は、まず漢字を読むところから。「読めなければ調べられませんし、日本語インドネシア語の辞典は充実したものがないんです」というマウラニさんは自分の経験に照らしても、3〜4年では無理、と感じているそうです。
候補者達は最初の半年、国の機関の日本語研修を受けますが、現場に出てからの日本語の勉強は受け入れ施設に任されています。日本語学校に通わせてくれる熱心な施設もありますが、その代わり、仕事と両立させるために休みはないという状況だったりします。また、丁寧に教えてくれる人がいなくて、学ぶ環境が良いとはいえない人も多いそうです。
一方、病院や介護施設の方も外国人を受けいれるのはたいてい初めて。色々手探りですし、介護現場は人手不足です。受け入れる日本側全体が準備不足なのかもしれません。
「受け入れてよかった」と少しでも感じられるようにと、「ガルーダ・サポーターズ」はインドネシア語の電話相談の他、受け入れ施設と候補者の両方に、日本語とインドネシア語で書いたニュースレターを作り、送っています。施設と連携して、アンケート調査なども積極的に行っています。これまでの調査を元に、2010年の1月には日本語教育や受け入れの準備などについて改善案を提言する予定です。
一方、看護師の国家試験も迫っていたので、2009年の年末には、希望者を募って、東京で試験対策の講習会を開きました。宿泊費が負担になるため、ガルーダ・サポーターズの会員が協力して、参加者にホームステイをしてもらいました。
また、2010年の1月には、インドネシアからの第二陣約360人が現場に出ます。「頑張れる人は、国籍関係なく、差別なく、働けるような医療や介護の現場を実現させたい」、と宮崎さんは話していました。
関連情報・お問い合わせ先
- ガルーダ・サポーターズ(事務局長の宮崎和加子さんのページ)
http://www.miyazaki-wakako.jp/