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作文集「亡きお父さんお母さんへの手紙」 |
事故や病気などで親を亡くした子供を支援する「あしなが育英会」は、子供が進学するための奨学金の支援や心のケアなどの活動を行っています。
「あしなが育英会」では月に1回、全国から親を亡くした子供たちが集まり、一緒に遊んだり、亡くなった親のことを話したりする「つどい」を開いています。スタッフや研修を受けた大学生のボランティアも一緒で、話したくなければ無理して話す必要はありません。
「つどい」の最後にはその日の感想や亡き親への手紙を書く時間があります。それがこのほど、一冊の作文集「亡きお父さんお母さんへの手紙」にまとめられました。52ページに42人の作文が載っています。
文集をまとめた、あしなが育英会の西田正弘さんは「子供達が少しずつ、お父さんお母さんを亡くした気持ちを話してくれたことで、子供達自身の気持ちが変化して、ちょっとずつ元気になって、それを日常生活に帰った時の力にしてくれているな、ということを感じました」と話します。
作文を書いた子供に話を聞こうと、池田智子リポーターが東京・日野市の「あしながレインボーハウス」で9月に開かれた「つどい」を取材しました。
この日の参加者は5人で、ボランティアの人達とボールなどを使って体を動かして遊んだ後、おやつを食べました。その後、部屋で輪になって座り、夏休みの思い出などを一人ずつ話しました。
お父さんを亡くした高校1年の男の子は「最初はほんと来たくなかったんです。でも、亡くなった父のことをみんなに話していると、心がすっとすることが最近は多くなってきました」と話します。
また、この男の子は今年の3月の「つどい」の時、「僕はこのつどいを通して家族の重大さを学ぶことができたので、良かったと思っています」と書いています。書いた時の気持ちについて、「親に反抗ばかりしてて、親自身も死にたい、死にたいとか言ってて、それを聞いてるだけでも、いらだってくるという感じでした。でも、ここに来たら、もっと家族を大切にしなきゃいけないな、ということに気付かされたんです」と話していました。
この男の子は、大学生になったら、「今度はボランティアする側で自分と同じような子供たちを支えたい」とも話してくれました。
他の子供たちも、生活の変化や自分自身の複雑な心境などをを率直に書いた手紙や文章が文集にはおさめられています。親を亡くした子供がどういう気持ちなのか、どういう状況なのか、理解するきっかけにもなるんです。
事故や病気の他、最近では、自殺で親を亡くす子供も増えています。あしなが育英会の調査では、父親を亡くして母子家庭になった場合、その4割は月収が10万円以下だということです。経済的に苦しいため、「学校を続けさせられるか心配」「進路を変更した」という答えも多かったということです。
将来に前向きになれないと進学のことも考えられませんし、奨学金などの支援も役にたちません。あしなが育英会の西田さんは、多くのこういう家庭に文集を通じて「つどい」のことを知ってほしい、と考えています。
西田さんは「お父さん、お母さんを亡くした早い段階で、こういう場所に繋がってもらうことで、一人じゃないよ、とダメージを軽くしてもらい、『勉強を頑張ろうか』というモチベーションに変えていく、という流れになることを期待しています」と話していました。
「つどい」が始まって2年、文集を作ったのは育英会や「あしながレインボーハウス」での活動を広く知ってもらう目的もあります。
文集「亡きお父さんお母さんへの手紙」は、「あしながレインボーハウス」(042-594-2418) に問い合わせをすれば、無料で送ってくれます。