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「いきいき福祉ネットワークセンター」を中村キャスターが取材しました。 |
記憶障害や言語障害、意欲の低下といった認知症の症状を65歳未満で発症する「若年認知症」。およそ5万人の患者が全国にいるとみられています。「若年認知症」という言葉は徐々に知られるようになってきましたが、社会の理解が進んでいるとはまだいえないのが現状です。
「若年認知症」の患者とその家族を支える取り組みとして、中村愛美・情報キャスターが取材したのは、東京・目黒区にあるNPO法人「いきいき福祉ネットワークセンター」です。若年認知症専門のデイサービスなどを運営しています。
なぜ専門の施設やサービスが必要なのか、「いきいき福祉ネットワークセンター」理事長の駒井由起子さんは「普通のデイサービスになかなか馴染めない」ことを一つの理由として挙げます。若いので、なぜ高齢者の中に入らなければいけないのか、という気持ちが本人に強いことが多いそうです。またもう一つの理由として、若くて体力があるために、認知症の症状が高齢者よりも強く出ることがあります。そうすると、施設の方から利用を断られてしまうこともあるそうです。
「若年性専門の施設を作らないと、行き場がなくなってしまい、日々介護している家族も大変だ」と考え、「いきいき福祉ネットワークセンター」では2006年に専門のデイサービス「いきいき学芸大学センター」を始めました。
このデイサービスでは、症状の進行を遅らせたり、改善するために、「自分のやりたいことをやって、楽しく過ごしてもらう」というのが、作業療法士でもある駒井さんの基本方針です。
中村キャスターが朝10時ごろにお邪魔すると、8人の利用者に「きょうは何をしたいか」希望を聞いているところでした。
8人のうち2人は「お昼ご飯」作りの担当になりました。2人はまず、作るメニューを読み上げながら、紙に材料や段取りを書き、壁に貼ります。スタッフはいますが、なるべく手は出しません。何を作るか、次に何をするか、忘れているような時は、声をかけ、貼った紙を見てもらったりして、思い出してもらいます。
まっさきに手をあげた一人の男性は料理好きのようで、スタッフが見守る中、里芋を手際よく、切ったり、煮たりしていました。とても楽しそうで、取材する中村キャスターも味見の時、ご相伴にあずかりました。
料理は、どの材料を先に切るか、煮るのに何分かかるか、段取りを考えることが必要ですし、手も動かすので、脳の活性化にいいとされています。そして、料理だけでなく、園芸でも工作でも学習トレーニングでも、このデイサービスですることはどれも「計画して、実行して、そして、振り返る」ことを大事にしているということです。
また、施設の中の活動だけでなく、一日一回必ず「外出」もするようにしています。近くの公園まで散歩したり、掃除をしたり。時には、前々から計画をたてておいて、バスや電車に乗って、遠出もします。あとで、写真を見てお互いに話をしたり、デイサービスの部屋に貼ったりしています。認知症になる前には当たり前だった外出をすることで、「社会とのつながり」を感じられるようにするんです。
利用者の症状は様々ですが、デイサービスに通い続けるうちに、「いらいらせずに、穏やかになった」「昼間身体を動かして活動するようになってから、夜よく眠るようになった」といった変化が見られる方もいるそうです。
駒井さんは「自宅で家族と一緒にいるだけでなく、知らない人と交流して、その人と仲間になっていく、つまり、自分の所属する場所ができるっていうことが、一番の効果だと思います」と話します。「社会とのつながり」を取り戻すことが、症状の進行を遅らせたり、改善することにつながるようです。
利用者同士でおしゃべりしたり、したいことをしている時の皆さんのいきいきとした表情が中村キャスターにはとても印象的でした。
駒井さんは、「制度的にも不十分な面があったり、 まだまだ社会に理解されていないと思うこともあるけれど、楽しく前向きに生きていけるようにサポートしていきたい」と話していました。
関連情報・お問い合わせ先
- NPO法人「いきいき福祉ネットワークセンター」
http://www15.ocn.ne.jp/~iki-iki/