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賑わう「お互いさまねっと」の青空市 |
楠葉絵美・情報キャスターが取材したのは、1964年、45年前に入居が始まった横浜市栄区の公田町団地です。坂道をのぼっていくと、斜面に5階建ての団地33棟が建ち並びます。
公田町団地には現在約2000人が住んでいますが、およそ3割が65歳以上と見られています。家族が多かった頃に比べ、一世帯あたりの買い物の量が減り、団地の中にあったスーパーは10年ほど前に撤退、その後できたコンビニも2年前になくなりました。
そこで自治会や民生委員などが中心になって作ったボランティア組織「お互いさまねっと公田町団地」が毎週火曜日、団地の広場で「青空市」を開いているんです。
バスに乗って行けば、大きなショッピングセンターもありますが、足腰が弱ると、重いものを持つのはバスを使っても大変です。「重いものだけでも、団地の中で買ってもらおう」と火曜の青空市は始まったんです。
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新鮮な野菜など商品は約70種類 |
楠葉キャスターが取材した日は、大根にかぼちゃ、キャベツといった新鮮な野菜に、スイカなどの果物。それにお米や飲み物、調味料、洗剤、箱ティッシュなど70種類もの品が並んでいました。仕入れも売るのも、15人ほどの住民で全てやっています。
午前11時開店ですが、10分ぐらい前から次々と買い物客が訪れ、買い物が終わると、皆さんベンチに座り、おしゃべりが始まりました。持つのがちょっときつい場合は、ボランティアで家まで運びます。
おしゃべりがはずむ2人の女性に聞くと、「重いものは大船から買ってくるのも大変ですよ。バスに乗ったり降りたりだけでも大変なので」とか「団地の一番上に住んでいるので、坂が大変なんです。でも持ってもらえるので、ついいっぱい買ったりします」と話していました。
仕入れは近所のスーパーなどからですが、売る値段はほとんど上乗せしていません。利益をあげるより、損しないで続けることが大事だからです。ボランティアの中には、一家の台所を預かる方も多く、買い物の技を生かしています。なので、去年の10月に始めて以来、ほとんど毎回売り切れているそうです。
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公田町団地の坂道に立つ楠葉キャスター |
賑わう青空市ですが、もう一つ大事な役割があります。自治会長の大野省治さんは「買い物に見えて、『元気だねこんにちは』という挨拶が大切なんです。重い野菜を持って行くと、その家を訪問することもできますし」と話します。団地内では、ブザー押しても出てこない、ドンドン叩いても応答がない、という状況で、亡くなった方、つまり「孤独死」が結構あったそうです。「そういう事が無いように、安否確認になるのも大事な目的だ」そうです。
外出がおっくうになった高齢者も、外に出るきっかけになります。買ったお弁当をその場で広げて食べていた男性は「知っている人が多いから色々話が出来ていいんです。ここは木陰もあるし風も通るから、いつもゆっくり過ごしてます」と話していました。
「お互いさまねっと公田町団地」では、広場の横の空き店舗も合わせて、地域のコミュニケーションの場にしようと考えています。近く、NPO法人にして会費も集め、わづかですが、青空市の儲けも足して、空き店舗を借りる予定です。
喫茶コーナーを作って、ゆっくりできるようにする予定ですし、高齢者だけでなく、小さい子供のいるお母さんたちも気軽に立ち寄れるようにしてゆきたいということです。
青空市の責任者の1人で、民生委員の有友フユミさんは「私もこれから年を重ねていきますけど、こういったふれあいができれば、一番良いと思っています。ここに来ればなにか困った事があっても大丈夫、みたいな居場所になるよう、頑張りたいと思っています」と話していました。