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「東京都盲ろう者支援センター」の前田センター長にインタビュー |
視覚と聴覚の両方に障害がある「盲ろう者」の社会参加を支援する「東京都盲ろう者支援センター」が今年の5月、東京・台東区に開設されました。
ヘレン・ケラーと同じような状況にある盲ろう者は全国に約2万2千人、東京都内には約2千人いるとみられていますが、これまで専門の支援施設はありませんでした。
センター長の前田晃秀さんは、「盲ろう者は耳で聞いてコミュニケーションすることができないし、目で手話を読み取ってとか、筆談をしてということも難しい状況です。それが大きな壁となって、視覚障害者や聴覚障害者向けの施設ではなかなか受け入れてもらえないという現状があるんです」と話します。二重の障害のために、福祉の制度の谷間におかれてしまっているのです。
そこで2009年の5月、東京都の補助を受け、NPO法人「東京盲ろう友の会」がセンターを設立しました。
都内の約2千人の盲ろう者のうち、「友の会」が把握しているのは100人ほどです。前田さんは「コミュニケーションの方法を習う機会もなく、家の中に閉じこもり、朝おきてごはんを食べて寝るだけ、という生活を送っている人もかなりいると思います。そういう盲ろう者が外に出るための力になる場所です」と話します。
盲ろう者は手話をお互いに触って理解する「触手話」や、盲ろう者の指を点字の点に見立て、指をたたいて会話する「指点字」などをつかってコミュニケーションをしています。
センターでは、「触手話」や「指点字」などコミュニケーションの方法を学ぶほか、家事をしたり、外出したり、買い物をしたりするために必要な生活訓練を行って、社会参加を進めます。
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盲ろう者の生活に便利な生活用品が展示されています |
また、センターの一室には、便利なように工夫された生活用品が展示されています。池田智子リポーターが取材した日は京都府の梅木久代さんが見学に来ていました。
女性のスタッフの説明を、梅木さんに付き添うご主人が、「触手話」で伝え、梅木さんはご主人を通して、色々と質問します。
「点字のついた震動するタイマー」について説明があった時は、「よく時間を忘れて、鍋を吹きこぼしてしまったりするので」と、梅木さんは値段など熱心に質問していました。また
他にも、触ってわかる計りなど、「砂糖の入れすぎが防げそうですね」と話しながら、使い勝手など色々質問し、少しでもより便利なものを探すのに一生懸命でした。
見学後に梅木さんに話を聞くと、「盲ろう者の生活の中では、心配なことが色々とあります。ここには、盲ろう者の生活に便利なものが、そして初めて見るものがいっぱいありました。
素晴らしいセンターでうらやましいと思います。京都にもこんな場所ができてほしいです。」と話していました。
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パソコンを使うのを助ける機器もあります |
盲ろう者の中にはパソコンを使える人もいます。パソコンの画面の文字を、「点字」で打ち出して読む「点字ディスプレー」という電子機器を使います。点字ディスプレーはセンターにも展示されていて、訓練もできます。ただパソコンを使うには、まずは、点字のやり方を覚えることが必要です。盲ろう者一人一人の置かれた状況が異なるので、パソコンを習得するまでにはかなり時間がかかるんです。そのためにも専門の支援施設が必要となっていました。
また、「東京都盲ろう者支援センター」は盲ろう者同士の交流会やサークルの場としても使えます。
こういう場所が東京に生まれたことは、盲ろう者が意欲を持って生きていくための、本当に大きな一歩なのです。
東京都盲ろう者支援センター
〒111-0053
東京都台東区浅草橋1-32-6 コスモス浅草橋酒井ビル2階
TEL:03-3864-7003
関連情報・お問い合わせ先
- NPO法人「東京盲ろう者友の会」
http://www.tokyo-db.or.jp/