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「ハート・プラス」マーク |
「ハート・プラス」マークというマークがあります。心臓や呼吸器、小腸などの機能障害※や内臓の疾患※など「身体の内部に障害がある人」を表しています。
考案したのはNPO法人「ハート・プラスの会」です。崎山敏也記者が東京・中央区に住む理事の村主正枝さんを取材しました。村主さんは免疫の異常が原因とされる膠原病に難病の肺高血圧症などを併発していて、心臓に負担がかかるようなことはできませんし、医師からは「体力は健常者の半分と思ってください」と言われています。肺高血圧症の治療に24時間点滴が必要なため、外出の時は、ショルダーバッグに薬液とポンプを入れて出ます。電車やバスで立っているのはつらいし、満員電車はとても乗れるような状態ではありません。
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「ハート・プラスの会」理事の村主さん |
ただ、その障害は見た目ではわかりません。発病した20代の頃は母親に付き添われて病院に行くこともあったのそうですが、「母が私のために席を取ってくれて、母を立たせていると、周りからものすごく冷たい視線が来るんです。病人なんです、といちいち説明するわけにはいかないですし、親不孝な人だ、と思われているだろうな、という後ろめたさをすごく感じていました」と話します。
このように、外見では障害がわからないため、つらい思いをしている人は多いんです。「身障者マーク」のある駐車スペースに内部障害者が車を止めて注意されたり、車椅子を使う障害者から「そこを使わないで下さい」と言われて、トラブルになることもあるそうです。
「身体の内部に障害がある人」は、障害者手帳の交付を受けている人だけでも100万人以上います。「ハート・プラス」マークは、身につけたり、掲示してもらうことで、「障害を目に見えるものにしよう」と2003年に考案されました。
「ハート・プラスの会」のメンバーは皆、無理ができない体なので、自分の住む自治体へ働きかけたり、インターネットを通じて広めたりと、地道な活動が中心です。
それでも、例えば、関東地方では東京の東村山市、埼玉県上尾市や千葉県佐倉市などで市役所の駐車場に掲示されるなど少しずつ広まってきました。(詳しくは「ハート・プラス」の会のホームページ参照)
村主さんは「奈良県では、一つの市が取り上げると、他の市に自然と広がりました。こちらからの働きかけというよりは、自治体の方からマークを使用したい、と言っていただけるような状態になってきたので、地道に草の根でやってきたことが、結果を出してているようです」と話します。内閣府がホームページに載せたこともあって、ホームページや広報誌に載せる自治体も増えています。
また、川崎市では2008年から、市バスの中のポスターで、「ハート・プラス」マークを身につけている人への配慮を呼びかけています。それと共に、優先席にオリジナルのステッカーを貼り付けています。ステッカーには、「内部障害や病気のお客様もご利用下さい」とあります。
ただ、川崎市の市バスのような公共交通機関はまだまだ少ないのが現状です。村主さんは「全体的にはまだ、多いとは言えません。街中で見る機会がもっと増えてほしいです」と話します。
また、 村主さんは、「特別なマークではない」、ということがわかれば、健常者にもマークの必要性をわかってもらえるのではないかと考えています。「人間、生まれて、死ぬということは決まっていて、どっかで病気になります。内部障害や内臓疾患は全く他人事じゃない、いつそういう立場になるかわからない、ということをわかってもらいたいです」と話していました。
「ハート・プラス」マークには、「思いやりをプラスしてほしい」という意味が込められています。「ハート・プラスの会」の活動は「内部障害のことを今わかってほしい、というだけでなく、全ての人が思いやりの心を持ってほしいという未来のための活動なんです」とも村主さんは話していました。
「ハート・プラス」マークは、「ハート・プラスの会」のホームページからダウンロードできます。
(※内部障害 身体障害者福祉法で定める、心臓、腎臓、肺、膀胱・直腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の6つの障害の総称。
※内臓疾患 五臓六腑に影響する難病であり、障害者でありながら、外見的には五体満足に見受けられるもの)
関連情報・お問い合わせ先
- ハート・プラスの会
http://www.normanet.ne.jp/~h-plus/