障害者が働く環境は整っているとはいえず、企業などで働く障害者はまだ多いとはいえないのが現状です。そんな中、楠葉絵美・情報キャスターは、「絵を描くこと」などアートを障害者の新しい仕事にしようという取り組みを取材しました。
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エイブルアート・ジャパンの太田さんに、作品の説明をしてもらう楠葉キャスター |
障害者が自宅や施設で日々描いている作品の中には優れたものも少なくありません。しかし、障害者や施設の側はどのように作品を売り込んだらいいか、わかりませんし、一方で、企業や官公庁が優れた作品を商品やパンフレットなどに使ってみたいと思っても、どこへ行って、誰に相談したらいいのか、わからないのが現状です。
そこで、「エイブルアート・カンパニー」という団体が3年ほど前に活動を始めました。
「エイブルアート・カンパニー」は優れた作品を探し、作家として登録してもらいます。登録は無料です。そしてインターネットなどを通じて作品を紹介し、使いたいと思った企業や官公庁に貸し出します。受け取った著作権の使用料は、経費を引いて、作家に支払います。
「エイブルアート・カンパニー」東京事務局の太田好泰さんは「障害のある人に対する社会のイメージというのは、何か支えてあげるとか、助けてあげるというイメージがずっとつきまとっていたと思うので、障害のある人が作った絵だから使ってあげるではなくて、
良い作品だから使いたいって状況に持っていきたかったんです」と話します。そうすると対価が生まれ、仕事になるわけです。
2008年2月現在、登録作家は32人います。初めは12人でスタートし、その後は、年に1度、作家を公募して、増やしています。作品は合わせて1420点。全て「エイブルアート・カンパニー」のホームページで見ることができます。
楠葉キャスターは2人の作家がいる埼玉県川口市の工房を訪ねました。化粧品会社のカタログの表紙に使われたことがある大倉史子さんと銀行のカレンダーなどに使われたことがある佐々木省伍さんです。2人が通う「社会福祉法人みぬま会・工房集(しゅう)」には主に知的障害のある人が通っていて、平日の10時から15時までを好きな絵を描いたり、織物を織ったりして過ごしています。
大倉さんはいつも1人で集中して、作品を一日で仕上げてしまいます。一方で、佐々木さんは、職員の方と話をしながら、描くものを考え、3日ぐらいかけて作品を仕上げているそうです。(お二人の作品はもちろん「エイブルアート・カンパニー」のホームページで見ることができます。)
「工房集」の職員は「取りまく環境の人達、例えばお母さんがとても喜んでいますし、職員も、絵画という活動を通して社会に繋がっていくとか、みんなが生み出した作品を通してお金にするっていうことを、常に考えて、常に悩んでいるところだったので、すごく力を感じますし、これからの発展も含めた広がりも感じます」と「エイブルアート・カンパニー」の取り組みについて話していました。これからも、一人一人がそれぞれのペースを守って、作品を生み出せる環境を作っていきたいということです。
「エイブルアート・カンパニー」では作品を知ってもらおうと、インターネットだけでなく、イベントなども開いています。デザインやアパレル関係の方がよく歩いている代官山などで開いていて、イベントが実際の発注につながったこともあるそうです。
ただ一方で、障害者自立支援法が施行されてからは、お金にならないアートの活動をやめる施設もあるようです。施設の利用にもお金がかかるので、通えなくなる障害者もいます。
東京事務局の太田さんは「絵を描くというようなことは仕事ではないと思う方も多いのが現状です。そうなると、こういう表現活動はやめましょうということになり始めたんです。そこに僕らは危機感を持っているんです」と話します。
アートを仕事に変える仕組みを作ることで、今まで通りに障害のある人達が表現ができるようにしたいんです。
「何かを表現したい」というのは誰にでもある大事な気持ちです。その人らしく生きていけることはまた、「働く」ということを見直すことにもつながるようです。
関連情報・お問い合わせ先
- エイブルアート・カンパニー
http://www.ableartcom.jp/top.html