赤ちゃんを連れていたり、妊娠中のお母さんをサポートしてくれて、気軽に使えるタクシーが各地に生まれています。子育てを支援するタクシーはもともと、香川県の高松市で5年前に始まり、高松市の「全国子育てタクシー協会」には2009年2月の時点で55社が加盟しています。
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練馬区の「こころタクシー(COCORO TAXI)」 |
東京都内では2008年9月、初めての子育てタクシー、「こころタクシー(COCORO TAXI)が練馬区で開業しました。利用には「こころタクシー」の会員としての登録が必要で、利用する時は事前に予約します。予約金は400円。練馬区だけでなく、23区の西側はだいたい利用できます。
白い車体にはアルファベットで「COCORO TAXI」と書かれ、ピンクや黄緑などパステル調の色でデザインされたお花の絵で飾られています。
ベビーカーをトランクに入れる時などはドライバーが手伝いますし、車内にはチャイルドシートを常備しているほか、後部座席におもちゃやおむつ替えシート、エチケット袋、口やおしりをふけるウェットティッシュなども用意してあります。
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ドライバーの篠塚さんにインタビューする池田リポーター |
池田智子リポーターは、練馬区に住む30代前半の母親が1歳の子供と一緒に利用するところを取材しました。この母親はこれまでに、病院に行ったり、子育てママの集まりが電車では不便な場所で開かれた時などに利用したことがあるそうです。
ドライバーの篠塚裕子さんが到着を知らせる電話をすると、ベビーカーに子供を乗せて玄関先まで降りてきました。乗る前に話を聞くと、「子どもは毎回寝てしまうんです。少しの距離でもウトウトと寝てしまうのは、普通のタクシーで抱っこして乗ってるときにはありえないことなので、そういう意味でも、子どもにとっても居心地がいいんだと思います」と話します。
優しい感じの漂う色遣いの制服に身を包むドライバーは現在16人。13人は女性です。この母親は「やっぱりお話ししやすかったり、子育て経験がある方だと、子どものことも話題にしてくださったりというところで、一息つけるというのがありますね」と話していました。
男女問わずドライバーは「全国子育てタクシー協会」の研修の他、マナー研修や、チャイルドシートの使い方の研修、出産までの女性の体や精神面のことなどを学ぶマタニティー研修なども経験しています。
取材したドライバーの篠塚さんはもともと家族で飲食店をやっていましたが、1年前にご主人を亡くし、接客と運転の経験を活かして、ドライバーに応募しました。
「すごく子育てに不安がってるお母さんが多いんです。こうなんだけどどうしよう、って言われる方がいるんで、前回乗せたお母さんはこうですよ、というと、あーそうなんですかと、安心してくれたこともありました」と話していました。「この次もおたくの車に乗りたいよ」と言ってもらえると、本当に嬉しいということです。
「こころタクシー」では女性が働きやすい制度も開業にあたって整えました。例えば、子供が小さいうちは勤務時間を短く、大きくなったら長くしたり、子どもが食事の時だけは一緒にいてあげて、また戻って働くこともできます。
「こころタクシー」を運営する茂呂運送の取締役、吉田守泰さんは「子育てしながら働くというのは社会的な課題でもありますが、タクシーを利用することで、子育てのサポートにもなります。そこはすごく結びついてるところだなと実感しています。利用する側とサービス提供する乗務員さんの思いが一致しているところがいいと思っています」と話します。乗る方、乗せる方、どちらの安心もかなえたいということなんです。
9月に開業して約3か月で会員は800人を超えました。お母さん達はネットや口コミで探し当ててくるそうです。吉田さんの話では、「子供が双子のお母さんの利用が意外と多いんです。車でも電車でも、双子だと外出は大変なようで、結構遠くの実家に帰るときに使う人もいる」ということです。開業前には考えていなかったニーズもあるようです。
「こころタクシー」は、子育て支援の他に、塾や習い事の送り迎えで、子供一人だけでも利用できます。また高齢者の利用も多いようです。ドライバーの篠塚さんは高齢者を担当することが多いのですが、「こういうタクシーがあるなら安心して外に出られる」という声もよく聞くそうです。タクシーが色々なニーズに応えようとするのは利用者にとっては歓迎です。