|
宅配をする店の前には旗が立っている村山団地 |
高齢化が進む郊外の団地などで「商店街にお客を呼び戻そう」という試みが始まっています。山崎景子・情報キャスターが取材したのは東京・武蔵村山市にある都営村山団地。昭和40年代に建てられ、現在は、65歳以上の住民が4割を占めています。高齢化が進んでいるうえに、最近大型商業施設も付近に進出し、団地など市内の商店街に来るお客さんが減っています。
そこで、武蔵村山市商工会が2007年の11月、「まいど〜宅配」というサービスを始めました。電話やFAXで注文を受けて、自宅に商品を配達します。
参加しているのは団地の商店が中心で、店の前には黄色ののぼりを立てているほか、商工会で店の一覧が載っている冊子を家庭に配っています。店によって基準は異なりますが、1000円から3000円ぐらいを越える買い物であれば、無料で宅配します。
山崎キャスターは村山団地中央商店街の衣料品店「いなりストアー」の宅配に同行しました。店長の比留間誠一さんはまず、団地に住む94歳の一人暮らしの女性を訪ねました。ほつれを直したセーターを配達に行ったんですが、すっかり顔なじみで、家の中も勝手知ったる感じです。比留間さんは2週間に一回ぐらい配達に来るそうですが、30分近くおしゃべりして帰ることが多いそうです。
週2回ヘルパーさんが来る以外はほとんど訪ねてくる人はいないというこの女性は、山崎キャスターにも昔の写真とか引っ張り出して、嬉しそうに色々話をしてくれました。
こういう高齢の方が特に団地には多いので、「まいど〜宅配」は高齢者の見守りの役割も期待されています。心配な人がいると、市の包括支援センターに「ちょっと注意をして下さい」と連絡することになっています。
もちろん家族が近くにいる方もいますし、介護の仕事の方も見守っていますが、比留間さんは「個人の生活に入り込みすぎてもいけないので、その辺は間合いを見ながら、本当に心配な時は私たちからも連絡するという感じです」と話していました。
さて、この日比留間さんはもう一人、団地に家族と一緒に住んでいる高齢の女性も訪ねました。この女性は病気で6年前から車いす生活です。家族もそれぞれのことに忙しく、洋服を買いに外に出ることも少なくなりました。そこで昔馴染みの比留間さんから服を買っているんです。
女性は「ある程度好みとか、サイズがわかってもらっているので助かります。車いすと言っても、やっぱり外に出るには身だしなみをきちんとして出たいし」と話していました。取材に行ったのは年末でしたが、正月明けにデイサービスに着ていくためのフード付きの上着について、比留間さんに一生懸命相談していました。
比留間さんは「まいど〜宅配」について、「ちょっと行けなくなったんだけど、持ってきてくれない?って言われれば持っていかなくちゃ駄目です。それは大変だけど商売のうちだから。でもこういうのは街を支えているんじゃないかなって思うんです」と話します。
商店街の中には今も辞める店があって、厳しい状況には変わりありません。しかし、例えば団地の米屋さんは「おにぎり3つからでも配達するし、お惣菜もリクエストに応えるように頑張ってます」と話していました。また酒屋さんは配達の時、八百屋などへ買い物を頼まれることもあります。おかげで、「近くに別の安い店があっても、うちに頼む人もいるんです」と話していました。皆さん工夫をして商売を続けてゆきたいと考えているんです。
比留間さんは、まだまだ「まいど〜宅配」を知らない人、遠慮している人もけっこう多いと思うので、知らせてゆきたいと話していました。