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「芝の家」を訪れた新崎キャスター |
東京・港区の芝地区。芝公園や増上寺がある江戸時代からの伝統のある古い町ですが、今は高層ビルや高層マンションが立ち並んでいます。2008年の10月、港区の地域力再発見事業の一環として、芝三丁目に「芝の家」という施設がオープンしました。
ビルの1階にある「芝の家」は、外壁が下町風の板壁に改装されていて、ガラガラと引き戸を開けて入ります。入ると、ちゃぶ台に座布団。竹馬やコマ等、昔の遊び道具が散らばっています。また、外にでると、「縁台」もあるんです。ご近所づきあいが盛んだった昭和30年代をイメージしています。東京タワーも見えて、まさに映画の「三丁目の夕日」のようです。
「芝の家」は、近くにある慶應義塾大学の教授らによる街作りの組織「三田の家有限責任事業組合」が運営していて、学生達が交代で詰めています。
新崎真倫・情報キャスターが取材した日にいたのは、卒業生で、専属スタッフの渡辺久美さん(23)。渡辺さんが掃除などしながら待っていると、お昼過ぎから、学校を終えた子供たちが次々と現れました。
子供達に渡辺さんは人気者。ベーゴマの達人だからか、「ワタナベ」だからか、「ベベ」と呼ばれています。部屋の中で、ベーゴマで遊んだりしていると、外から子供達の声が次々とかかります。また、部屋の隅には、駄菓子の販売コーナーもあって、みんな100円ぐらいの範囲で、選ぶのにあれこれ考えてました。
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外で遊ぶ姿も |
竹馬や縄跳びを持ち出して、前の道路で遊ぶ子もいましたが、近所に住む年配の女性が通りかかって、話しかける姿も見かけました。「子供の頃、竹馬をよくやりました。なつかしいですねえ」という女性に話を聞くと、「いい子供の遊び場になってますよね。こういういうところで遊びながら、お話聴いたりするのもいいですよね」と話します。
このように、誰もが気軽に立ち寄れる場にするために、学生たちのアイデアを生かして、週末に食べ物を持ち寄ってちょっとしたパーティを開いたり、「街で聞こえる音を子供たちが録音して楽しむ」、なんていうイベントも開いたりしています。
また、昔から住んでいる「芝っ子」たちの中には色々な名人がいて、昔の遊びを教えてくれたり、日を決めて、スポーツチャンバラの教室を開いたりしているそうです。
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武山教授と渡辺久美さん |
このあたりでは、町内会の活動なども続いているんですが、新しい大きなマンションに最近越してきた人は、町内会などと関わるきっかけがなかなかありません。それでも、「芝の家」には時々、若いお母さんが「学生さん達とふれあってほしい」と子供を連れてくることもあるそうです。
渡辺さんの話では、お子さんが一人っ子だと、ちょっと世代の違う子供と遊ばせてみるのにもいいみたいだし、大学がやっているので、新しい人にもとっつきやすいのでは、ということでした。そして「若い夫婦なんかはここを通して、元々住んでいる人たちと関係を深めていけるんじゃないかと思います」と話していました。
運営の中心になっている慶應義塾大学の武山政直教授は、「昔をそのまま再現したのではなく、若い学生達からもアイデアを出しながら、今の平成の時代にあった触れあいを考えているんです」と話していました。懐かしい家並みの中に、今風のご近所づきあいが生まれそうです。