東京、神奈川を中心に、病院や福祉施設でボランティアライブをしているグループ「音種(おとたね)」。病院や福祉施設にいるとCDなどは聴けますが、生楽器や生うたなど、生きた音楽に触れる機会は限られます。「音種」という名前は、そこに「音の種を蒔いていこう」という意味を込めています。
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「横浜らいず」でのボランティアライブ |
「音種」を作ったのは、臨床心理士の資格を目指して勉強中の成松恵介さん。成松さんは以前、精神科の病院や福祉施設で働いていたことがあり、治療としての音楽=「音楽療法」にはなじみがありました。しかし、「こういう音楽をしたら、どう治るか、というのを考えて音楽療法に携わっていましたが、自分の音楽を心を込めて出し、演奏者と聴く人がいつのまにかつながれることが一番大切なのでは」と思い、音種を結成したのです。
知り合いの紹介や、インターネットの募集などで集まったメンバーはおよそ60人。サックスの得意な会社員から、オーケストラで演奏しているフルート奏者、歌で全国を旅しているシンガーなどバラエティーに富んでいます。障害のある方、難病の方、利用者の年齢層など様々な状況や先方の要望を考慮して、成松さんが毎回メンバーを選んでいます。
永井洋満ディレクターが今回取材したのは2箇所のライブです。
横浜市青葉区の障害を持つ幼児のための地域訓練会「ぽかぽかあおば」では、音楽で体感や刺激を受けるためのライブを行いました。アニメ主題歌を中心に、およそ60分。音楽に合わせて歌う子供達のキラキラした目が印象的だったそうです。
横浜市港北区の身体障害者支援施設「横浜らいず」では、主に50代、60代の方たちを前に、ボサノバやポップスが中心の90分のライブが行われました。車いすの手すりを指先でトントン叩きながらリズムをとっている方や、懐かしい童謡に目を潤ませる方もいたそうです。
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鈴などを手に、観客も演奏に参加 |
どちらの会場でも演奏したのが、民族楽器のカリンバで、お客さんに鈴などの鳴り物を手渡して、一緒に即興演奏。カリンバもお客さんが出した音も掛け声も、すべてがハーモニーになる不思議な雰囲気だったそうです。
参加者の一人は「お客さんとして座っているだけでは、自分の子供おとなしくできないんです。好きな様に楽器を触らせてくれたので、ありがたかったです」と話し、「ぽかぽかあおば」のスタッフの一人は「民族楽器とフルートの組み合わせがあったんですが、子供たちにとって初めての体験でした。とってもよかったと思います」と話していました。
これが、成松さんが大切にしている「つながり」なのでしょう。
これまでのおよそ2年間に60回のライブを行っている音種。ボランティアなので、交通費などはほとんど自己負担で、大変な時もあります。
それでもライブを続ける理由について、カリンバ担当で、普段は老人ホームのヘルパーをしている入江規夫さんは「聴いてもらう人の笑顔だったり、よかったよ、とか言ってくれるおばあちゃんの声だったり、求められているんだなって思えるから手弁当でもやっていきたいんです」と話します。
放送日の少し前には、2人のメンバーが、難病で外出が難しい子供の自宅を訪れ、演奏したそうです。「音楽療法も、芸術としての音楽も大事です。ただ、私は、必要とされれば、一人の方のベッドサイドでも生きた音楽を届けて行きたいんです」と成松さんは話していました。
関連情報・お問い合わせ先
- 音種
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