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東京・北区西ヶ原にある「勉強レストランそうなんだ!!」 |
坂本麻子・情報キャスターが取材したのは、東京・北区で知的障害のある人を主な対象にして活動しているNPO法人「勉強レストランそうなんだ!!」。学校に通う年齢の子供を対象に、数学や英語、理科、社会科などをわかりやすく、とっつきやすく、工夫して教えています。名前には「レストランのメニューのように、様々な科目を取り揃えた」という意味がこめられています。
「勉強レストランそうなんだ!!」は代表の福喜多アキコさんがご自分の娘さんと友達を自宅に集めて始めた勉強会から始まりました。10年ほど前、娘さんが中学の心障学級に入った時、福喜多さんは社会科や理科のないカリキュラムに疑問を感じたそうです。「そういう科目を学ぶ機会がないのはおかしい、障害があるからこそ社会に出る前に社会について学んでおくべきでは」と思って月に1回の勉強会を始め、それが現在の活動につながっています。
また、いわゆる「学校の勉強」の他、数年前からは社会人向けのメニューが増えています。福喜多さんは「娘も成長して22歳になり、仕事をしています。それまでとは違った内容の学びを続けて欲しい。一生涯にわたって、学びの場を提供してゆきたいんです」と話します。
具体的には例えば「自立を支援する講座」として、「悪質商法にだまされないために」。寸劇をまじえてわかりやすく教えます。他にも「自立のためのクッキング」や仕事について話したり、考えたりする集い。「環境問題に関心を持とう」という講座もあります。
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9月21日に開かれた「身だしなみ・おしゃれ」の講座 |
坂本キャスターがお邪魔したのは9月に行われた「身だしなみ・おしゃれ」の講座。自分が人にどのような印象を与えているか、見た目からも考えることで自立の第一歩にしよう、という講座です。福喜多さんの話では、「身だしなみとかにこだわらない方が多いし、親もそこまで気を回す余裕がないんです」ということです。
この日は化粧品会社「ポーラ」の販売教育部の社員3人がボランティアで指導しました。参加者は12人。付き添いの母親達が見ている中、洗顔の指導から始まり、化粧水や乳液の大切さ、下地のつけ方、といった基本、それぞれに合ったアイシャドウののせ方や口紅のぬり方まで、一人一人にメイクをしながら教えていました。
一人の女の子はメイクが終わると、嬉しそうに周りの人にメイクした顔を見せました。母親は「きれいになって親も嬉しいです。この子は高校3年生なので、これから社会に出るので、ほんとにきょうはちょうどいいタイミングでした」と話していました。
この自立支援講座は障害のあるなし、年齢も性別も関係なく参加できます。ふだん「勉強レストラン」を利用している4歳年上のお姉さんと一緒に、高校生の女の子が参加していましたが、メイクを教えてもらって、「雑誌とかで見る限りじゃわからないようなことが勉強できました。姉が化粧するのは成人式以来ですが、いつもより全然大人っぽいな、て思います」と嬉しそうに話していました。
この日の参加者はほとんど女性でしたが、次に身だしなみの講座を開く時は、メイクだけでなく、身だしなみ全般、社会のルールも学べる講座にして、男性も参加しやすいものにしよう、と福喜多さんは考えているそうです。
「勉強レストランそうなんだ!!」は、「知的障害者のための学びの場」ですが同時に、「地域の誰もが学べる生涯学習の場」も目指しています。福喜多さんは「障害の有無に関わりなく、色んな人たちが参加して活動する場、ノーマライゼーションの場を提供したいんです。色んな人に来ていただきたいです」と話します。
色々な人が来るようになると、メニューの内容も変わります。まだまだ模索中なのですが、今は「パソコンを学ぶ」講座に力を入れています。IT化は進んでいますが、知的障害者は学ぶ機会がなかなかありません。でも地域にニーズはあるんです。
法人になって3年目を迎えたこの「勉強レストランそうなんだ!!」。場所を維持していくための人や設備、そのためのお金には苦労もしていますが、今後も色々工夫して行きたいと福喜多さんは話していました。
関連情報・お問い合わせ先
- NPO法人「勉強レストランそうなんだ!!」
http://www.so-nanda.com/index.html