 |
横浜市旭区にある「あすなろ学校」 |
新崎真倫・情報キャスターが取材に訪れたのは横浜市旭区の「あすなろ学校」。東京・世田谷区のNPO法人「日本補助犬協会」が電機メーカーの「日本サムスン」の支援の下、今年の5月に設立しました。耳の不自由な人を助ける「聴導犬」の訓練を通じて、若者の自立を支援する施設です。
様々な事情から自立を求めている若者達が専門の訓練士の指導を受けながら犬の訓練に携わっています。犬は、飼えなくなったなどの理由で捨てられ、保護された犬から選ばれています。
取材した日は2人の若者がパピヨンの「響」とシーズー犬の「ハーモニー」を訓練していました。台所でキッチンタイマーが鳴っているのを知らせたり、目覚ましがなったら、飼い主の元へ行き、羽織っているタオルケットをはがしたり。
「ハーモニー」担当の白石智文さんは犬が大好きですが、飼った経験はなかったそうです。訓練を初めて3ヶ月、だいぶ犬を褒めるのが上手くなってきていました。犬との信頼関係が生まれてきたようです。
白石さんは「自分は割とネガティブに考えるタイプだったので、犬とうまく接することができないのは自分のせいだと思い、やる気をなくすことも多かったんです」と話します。しかし、ハーモニーの頑張りが感じられるようになってくると、「頑張っているこの子に対して自分は何ができるんだろうと考え、ちょっとうまくいかなくてもすぐに投げ出さずにねばり強くやるとか、その辺の心持ちをがらっと変えた時期がありました」と話していました。今はすごく訓練していても楽しいし、「若干親の心境になりつつある」そうです。
 |
ハーモニーと新崎キャスター |
白石さん達は訓練の時だけでなく、食事やトイレの世話まで全て責任を持ちます。半年間、学校に住み込みますが、寝る時ももちろん一緒です。犬の訓練は1日およそ2時間。それ以外の時間は犬の世話をしながら、福祉関係の勉強をしたり、手話を学んだり、時には社会経験として、ビジネスマナーを学んだりしています。学校には、犬もたくさんいますし、色んな人が出入りしていていつもにぎやかです。
「あすなろ学校」校長の朴善子さんは「ここで犬を介在していろんな人と出会うのが大切だと思う」と話します。例えばお客さんが来たら、挨拶をしたりお茶を出したり、お見送りをしたり、いろんな話をしたり。そういう経験をたくさん積んで、精神的に少し体力をつけてもらう半年間と考えているそうです。社会に出ようという自信もつきそうです。
白石さんは28歳。大学を出た後、やることを見つけられず何もしていない時期もありました。あすなろ学校に入った時点でも「この後どうしようか、しっかりは考えていない状態だった」という白石さんですが、学校での半年間を終えた後は福祉施設で働くことが決まっているそうです。「世話や訓練を通して、責任を持って何かをすることを学びましたし、共同生活の中で色々感じることもあって、しっかり働いて一人前の人間になるんだという意識が強くなりました」と話します。周りの人、そして子犬とのふれあいの中でいろいろと考えていったようです。
卒業生の中には犬と関わる仕事に就く人もいます。白石さん自身は犬と関係はない仕事ですが、「職場が学校から近いので、ちょくちょく遊びに来ます。ここで出会った人たちとのつながりを大切にしたいし、ハーモニーが更に訓練を続けて立派な聴導犬になる姿も見届けたい」と話していました。
聴導犬は全国にまだ20頭前後しかおらず、全く足りない状況です。若者も犬も一緒に成長し、より多くの聴導犬を育てたいとあすなろ学校は1期半年間で5人の若者を募集しています。(取材当時、2008年10月からの2期生を募集中)