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土曜朝イチエンタ。堀尾正明+PLUS!

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土曜朝イチエンタ。堀尾正明+PLUS!

番組からのお知らせ
プロフィール

堀尾正明

堀尾正明(ほりおまさあき)

生年月日:1955年4月24日
出身地:埼玉県
趣味:ゴルフ

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大学在学中に文学座附属演劇研究所に入り、研究生としてミュージカルに出演。81年にNHKにアナウンサーとして入局、初任地はNHK北九州放送局。
東京へ異動後は芸能畑を担当し、95年開始の『スタジオパークからこんにちは』メインキャスターとなり、人気を博す。
00年『NHKニュース10』のキャスターに抜擢され報道番組を担当。その後『サタデースポーツ』『サンデースポーツ』担当に廻りスポーツ畑へ。2002 FIFAワールドカップのメインキャスターを担当。

長峰由紀

長峰由紀(ながみねゆき)
TBSアナウンサー

生年月日:1963年6月28日
出身地:埼玉県
趣味:演劇鑑賞、相撲観戦

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●出身高校:埼玉県立松山女子高等学校
●出身大学:立命館大学 文学部 中国文学科
●身長:153cm
●血液型:O型
●入社年度:1987年

人権TODAY

人権に関わる身近な話題をテーマに掲げて、ホットなニュースをお伝えしています。

裁判員制度のバリアフリーについて、視覚障害者の場合を考える

放送日:2008年08月09日
国民が「刑事裁判」の手続きに参加する「裁判員制度」のスタートまで1年を切りました。裁判員として選ばれる人(20歳以上)の中には、視覚や聴覚に障害のある人や障害のため車椅子を使っている人も含まれます。最高裁判所では外出の難しい重度の障害者や高齢者、病人には裁判員の辞退を認めていますが、障害者の中にはバリアフリーの配慮があれば、参加できる人も少なくありません。しかし、障害者への対応は遅れ気味です。

例えば、視覚障害者が裁判員の候補になった場合、希望すれば手続きの書類は「点字」になります。しかし、バリアフリーの対応がどこまで可能なのか?はっきりしないことが多い状況です。
東京・新宿区の社会福祉法人「東京ヘレン・ケラー協会」で月刊誌「点字ジャーナル」を編集している戸塚辰永さんは「責任の重さは感じるが、断る理由はありませんから、裁判員に選ばれたら、引き受けたい」と話します。しかし、裁判員に選任されたらどうなるのか情報が少ないので、不安もすごく感じているそうです。

例えば、ふだん馴染みのない裁判所までどうやって行くのか、裁判所内ではどうやって移動するのでしょうか?
全国の裁判所の建物内には、点字ブロックなどは整備済みで、職員もサポートします。また、自宅から裁判所へ行くためには「ガイドヘルパー」が必要になりますが、最高裁判所の説明では、例えば裁判員がタクシーを使った場合、「やむをえない事情」と認められれば、その費用は裁判所が負担するそうです。これをガイドヘルパーにあてはめ、費用を補助したり、裁判所が派遣を依頼することができないか検討中ということです。(検察審査会では同じような例があるそうです)

手続きの書類はともかく、裁判で証拠として出される文書などの資料や弁論書などの内容を点字や音声で知ることはできるのか? 最高裁は現時点で考えていないようです。最高裁の説明では、裁判員制度の法廷では、裁判員にわかりやすくするため、裁判官、検察官、弁護士の口頭でのやりとりを中心とした審理にする方針です。そのため、障害の有る無しに関係なく、全ての裁判員が証拠などの文書を直接読むことは想定していないので、「書類を点字や音声にする必要はない」というのが最高裁の見解です。

ただ、証拠には写真や図などもありますし、被告の表情なども判断材料になります。「点字ジャーナル」の戸塚さんは「視覚障害者が理解できるように、きちんと言葉で説明してもらえるのかどうかが大切だ」と話します。視覚障害者の裁判員は裁判官のすぐ隣に座るので、証拠についてわからないことがあったり、被告の表情などを知りたい場合は、遠慮なく聞いてくれれば、補足説明をする、と最高裁は説明していますが、実際にちゃんと補足説明してくれるのか、うまく説明できるかどうかは、試してみないとわからない部分もあります。
7月に東京地裁で行われた模擬裁判では、事件の現場写真について、言葉で詳しい説明があったということですが、参加した視覚障害者の女性は「他の裁判員にとって、一目瞭然のことについて、何度も質問して良いか戸惑いがありました。また、配られた書類で自分だけ読めないものもありました。言葉での説明は色々ありましたが、本当に同等の立場で判断できるのか不安に感じました」と話していました。
日弁連がまとめた「裁判員のための法廷用語ハンドブック」。東京ヘレン・ケラー協会が点字版、音声版を発行している。
日弁連がまとめた「裁判員のための法廷用語ハンドブック」。
東京ヘレン・ケラー協会が点字版を発行している。
障害者が参加した模擬裁判はあまり行われていません。視覚障害者が模擬裁判に参加したのは、最高裁の把握している限りでは、2008年7月までに東京と広島だけだということです。障害者団体が意見や要望を表明する機会も最近になって設けられるようになりました。「点字ジャーナル」の戸塚さんは「情報提供が不十分です。視覚障害者の間では関心は高いのに、本当に裁判員に選ばれるのか疑心暗鬼になっています」と話していました。

裁判員制度そのものについての情報も不足しています。最高裁はホームページを音声読み上げ対応にしたり、PR映画に副音声をつけたりしていますが、裁判員制度についての点字図書などもほとんどありません。

「東京ヘレン・ケラー協会」では7月、日本弁護士連合会のプロジェクトチームが編纂した「やさしく読み解く 裁判員のための法廷用語ハンドブック」を点字にして発行しました。この本は、難しい裁判用語をわかりやすく解説しようと国語学者やアナウンサーも加わって作ったもので、「未必の殺意」は「死んでしまうなら仕方ないと思った」といったように、用語をわかりやすく説明し、裁判員制度の仕組みも紹介しています。「東京ヘレン・ケラー協会」では、「選ばれた時に備えて、参考にしてほしい」ということです。
「裁判員のための法廷用語ハンドブック」の点字版は給付制度を利用すれば視覚障害者は1200円程度で購入できます。

「裁判員制度」のあり方、運用の方法についてはまだ色々議論がありますが、どんな形で行うにせよ、聴覚障害者や車椅子の利用者なども含め、十分な「バリアフリー対応」をとることが求められています。(取材はいずれも2008年7月下旬)

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