オリンピックと共に開かれるパラリンピック。北京パラリンピックも2008年9月6日から
17日まで開かれ、20の競技で世界中から集まった選手たちが競います。
しかし有名な競技を除くと、オリンピックに比べたら報道量は十分とは言えません。
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パラフォトが開いた養成講座 |
横浜市のNPO法人「国際障害者スポーツ写真連絡協議会」(=「パラフォト」)は障害者スポーツの魅力を伝え、普及させようと、2000年のシドニー大会からパラリンピックに記者を派遣し、写真や文章などの記事情報を発信しています。
パラフォトが発信する記事は、インターネットを通じて見ることができるほか、パラリンピックと並行して、あるいは終わった後に各地で写真展などを開いています。
記者の中には、障害者スポーツを長年撮り続けているベテランもいますが、障害者スポーツに魅力を感じていても「取材は全く初めて」という人もいます。そこで、北京パラリンピックに向け、記者の養成講座が4回に分けて開かれました。
3回目までは、取材のルールやマナーを勉強したり、水泳で全盲の部の日本代表選手にインタビューする実習もありました。そして、並行して北京での取材の企画をたてました。
永井洋満ディレクターが取材したのは6月中旬に開かれた最終回。参加者が4ヶ月に渡って練ってきた企画を発表し、プロカメラマンやパラリンピックのスキーチームの元監督らを交えて、よりよくするために議論しました。
企画としては…
あまり知られていない障害者の「馬術」という競技をわかりやすく、興味を持てるように紹介しようという企画。また、写真だけでなくパラリンピックの現場の「音」を加えて「音の展覧会」を開きたいというものもありました。
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伴走者を取材している近松さん |
それから、「視覚障害者のランナーの伴走者が足りない」という現状を伝えたいという企画。
取材しているのは、ジャーナリスト志望という近松温子さんです。近松さんは伴走者の講習会などを取材していて、この日は「自分は陸上で挫折した経験があったから、誰かを応援したい!という気持ちで始めた」という伴走者の方の話などを紹介していました。
近松さん自身講座で学んだことや取材を通じて、「今までは障害者のスポーツとして見ていたけど、スポーツはスポーツなんだ。つまり競技として楽しんで見ることができるようになりました」と話します。自分の課題としては、オリンピックと違って「かわいそう」とか「がんばってるのね」と
いう視点が入ってくるので、そう見られないように伝えたいということでした。
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「埼玉」企画の阿部さん |
また「埼玉」にこだわった企画を立てているのは阿部謙一郎さん。埼玉の「車椅子バスケ」や「車椅子ラグビー」のチームを応援しながら取材しています。普段は学生の写真を撮るカメラマンをしている阿部さんですが、文章を書くのは苦手。今回すでにネットに記事を載せる経験をしているのですが、「今までは写真を撮るだけで、撮ったものを見せるのは学校の生徒さんぐらいだったので、他の方の記事を読みながら悩みつつ書きました。写真と文章があって初めて、車椅子バスケは楽しいんだよ、という自分の想いを伝えることができるのに気づきました」と話していました。
パラフォトでは近松さんや阿部さんを含め17人の記者を北京に派遣し、競技として、スポーツとしての障害者スポーツの魅力を伝えます。全員に共通するのは「障害者スポーツが好き」ということ。長野パラリンピックを見たことがきっかけで、この活動を始めたという理事長の佐々木延江さんは「障害者スポーツが好きで、その場所にいる人たちが自ら広めて行くのが重要だと思ったんです。パラフォトは『ファンのメディア』だと言っているんですが、その意味は『ファンがメディア』だということなんです」と説明してくれました。
「パラフォト」のウェブサイトにはすでにいろんな記事が載っています。例えば7月10日の記事は重度の脳性麻痺の選手がプレーする「ボッチャ」というスポーツの記事です。今回日本はパラリンピック初出場ということで、選手や監督の意気込みやルールの説明などが載っています。これからパラリンピック本番に向けて「障害者スポーツ」のスポーツとしての面白さ、楽しさ、そして競技としての魅力に気づかせてくれる記事が次々と現れるでしょう。
関連情報・お問い合わせ先
- 国際障害者スポーツ写真連絡協議会(パラフォト)
http://www.paraphoto.org/