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共有スペースで行われるコモンミール |
東京・荒川区に「かんかん森」という「コレクティブハウス」があります。コレクティブハウスの暮らしは、住んでいる部屋は別でプライベートは守られていますが、一部の家事や空間は共有する暮らし方です。
「かんかん森」はオープンしてから5年。有料老人ホームや保育園などが入居している12階建ての複合施設の2階と3階にあって、部屋はワンルームから2DKの部屋までと様々。山口智子リポーターが取材した時は、1歳から80歳ぐらいまでの26世帯39人が住んでいました。
共有スペースとして使えるのは、キッチンや食堂、リビング、洗濯室など。週に2回から3回は夕食を一緒にとる「コモンミール」があって、料理当番も月に一度は回ってきます。
山口リポーターが取材した日は料理担当の2人が、牡蠣の味噌グラタンやさつまいもごはんなど24人分の食事を2時間ほどで用意しました。途中、「量が足りないんじゃない?」と不安な声もあったんですが、無事完成し、みなさんおいしく食べていました。
「コモンミール」は、全員参加ではなく、食事をしたい人があらかじめ予約し、一人分500円から600円の予算を出し合って作ります。
この日料理当番だった宇田川藍子さんは友人とルームシェアをしながら住んで4年。宇田川さんはコモンミールについて、「ちょっと面倒くさいなっていう時もあるんですが、その代わり、週3回ぐらいは誰かが作ったご飯を食べられるので、そういう意味ではすごく楽しみだし、正直すごい助かります」と話します。「疲れて帰ってきたら、温かいごはんがちゃんとあって、おかえりとか言われると、あーいいなぁみたいな感じです」ということでした。
コモンミールのほかにも、共同生活をうまく運営していくために、代表や書記、広報など役割を分担し、月1回は定例会で色々話し合います。また、木工やガーデニング、図書など、趣味のグループも色々あります。
「かんかん森」ができて5年、人の入れ替わりはありましたが、住んでいる人たちにとってどんな良さがあるのか、子供と2人で住み始めて3年になる小笠原明子さんは「住んでいる人の中には、子育てを終えた女性の方とかもいるので、そういう方が通りすがりとかに、泣いてるけど大丈夫とか、こういう時苦しいわよね、とか、なにげない言葉を一言かけてくれることで、初めての子育ての私にとっては非常に心強かったです」と話します。
また宇田川さんも「住み始めた頃が20代の前半だったので、仕事や将来的なこととか、すごくわからなかったんですが、そういう時に、女性で昔からずっと仕事してきた方にアドバイスをもらったりということもありました」と話します。
世代間の交流が色々あって、若い人にとっては様々な意味で刺激になるようです。
一方で、いろんな人がいるからこそ、コレクティブハウスでは、お互いの距離感とか、ルールが大切です。家族4人で住んで2年になるという鈴木秀利さんは、「自分の部屋に戻れば他の人たちには会わないし、コモンミールも毎日あるわけじゃないんで、自分が食べたいと思ったら食べて、誰かいたら話してぐらいの、そういう意味ではいい距離感があるのかなと思います」と話します。
また、「かんかん森」がオープンした時から一人住まいをしていて、木工やガーデニンググループも担当しているという萩原豊秋さんは「ほどよい距離感を作るまでにはやっぱりぶつかり合いがありますね。ぶつかりあいを通じて自分自身幅広くなるっていうかな、それは感じます。人を見る目というか、付き合い方っていうのか、それは学ばせてもらったというのはずいぶんあります」と話します。萩原さんの言葉を借りると、「家族じゃない。友達じゃない。自分達の暮らしを豊かにするために集う仲間、って感じ」だそうです。
暮らしを豊かにするためにも、ぬくもりの伝わるぐらいの距離感を保ちながら過ごすのがいいのかもしれません。
その距離感をつかめる人同士であれば、生活を楽めるし、とてもいい暮らし方の一つだなと思った山口リポーターでした。
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コレクティブハウスは、北欧で広がり、日本では阪神大震災の後に高齢者用の復興住宅などでも使われ、各地に少しずつ広がってきています。
少子高齢化の中で、こうした暮らし方を求めている人も結構いるでしょうし、 現代版の長屋という感じで広がっていくと面白いかもしれません。