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ヌジュミではギャンブル依存症者の家族や行政の担当者向けなど様々なセミナーを開いている |
アルコールや薬物への依存症と同じように、パチンコやパチスロ、競馬といったギャンブルを「やめたくてもやめられない」のが「ギャンブル依存症」です。横浜市保土ヶ谷区にある女性専用のギャンブル依存症のリハビリ施設「ヌジュミ」を山口智子リポーターが取材しました。
女性の場合、本人や家族が世間体を気にして治療に踏み出せなかったり、また、家庭内で解決しようとして結局できず、家庭が崩壊したり、子供の育児放棄につながる場合もあります。男性よりも問題が現れにくい一方、大きな問題につながっています。
男女一緒のリハビリ施設はありますが、実際に来るのは男性が多いということですし、施設が男性専用の場合もあります。そこで、ギャンブル依存症の女性の回復を助けようと、去年の4月、全国で初めて女性専用でオープンしたのが「ヌジュミ」です。
ヌジュミ代表の田上啓子さんは「ギャンブル依存症は世界保健機構でも認められているように、病気だから治るし、治ってやめ続けている人がいる、ということを伝えたい」と話します。そしてそのためにも経験者が携わることが大事だということです。医師や精神保健福祉士といった専門家の協力も得ていますが、ヌジュミのスタッフは全員、ギャンブル依存症から回復した経験を持っています。
活動の中心はスタッフを交えて体験を話し合う「ミーティング」です。 依存症の人の多くは、今までは周りから説教されてばかり。そして、それに対して、謝ってばかりいた人達です。自分がギャンブル依存症という「病気」だということを認めたがりません。
ヌジュミでは説教を一切しないで、お互いの話を聞いてゆきます。そうやって、少しずつ罪悪感を和らげ、自分を「病気」だと認識していくんです。
「病気であることを認め、治そうと思うまで2年はかかった」というスタッフの一人は離婚も経験し、自分の親兄弟や友達を傷つけ、嫌われもしました。明日のお金にも困ったことがあったそうです。当時を振り返ってこの女性は「親にも一度は見放された私が助けられて、やめ続けられているのは本当に嬉しいことです」と話します。DVが原因でギャンブルにはまり、泊まり込みの施設で治療したり、同じ依存症の仲間と話し合える集まりに通ったりと色々ありましたが、今は自分の親とは一緒に生活しています。
「今度は自分の経験を次の人に渡したい」と最近ヌジュミのスタッフになったこの女性は「ギャンブルやってる人のことはギャンブルやってる人にしかわからないんです。同じような経験をした仲間だったら、相談できるし、言えることもある。仲間の中では心穏やかになれるんですよね」と話します。代表の田上さんも「ギャンブル場じゃなくて、あなたの居場所は他にあるんだよ、ということを伝えたい」とつけ加えます。現在ヌジュミに通う女性は3人。ヌジュミを今の居場所にしながら、少しずつ健康な生活習慣を取り戻し、最終的にはそれぞれ、社会復帰を目指します。
また、スタッフは「体験を話したり、悩みを聞いたりすることで、自分たちもギャンブルをやらないでいられるんだ」とも話していました。女性ならではの体験を「分かち合う」ことで、お互い元気になれるんだそうです。ヌジュミとは沖縄の言葉で「希望」という意味。「経験と力と希望を分かち合おう」と田上さんがつけたんです。
こうした活動はまだ少なく財政面でも厳しいため、企業や教会などからの助成や寄付で何とかヌジュミは活動を続けています。リハビリ施設としての活動と共に、行政とも連携して、少しでも多くの人に「ギャンブル依存症のことを知ってもらう活動も続けたい」と田上さんは話していました。
関連情報・お問い合わせ先
- ヌジュミ
http://homepage3.nifty.com/nujyumi/