 |
庚申塚商栄会にある「大正さろん」 |
「商店街の空き店舗を活用しよう」という試みは各地で生まれていますが、
東京・豊島区の「庚申塚商栄会」には「大正さろん」という空き店舗を利用した施設があります。
都電の庚申塚駅から延びる商店街の中ほど、マンションの1階にあって、中に入ると、
カフェのような椅子やテーブルに、書道の作品などを展示しているミニギャラリー。それに調理の設備もあります。誰でも自由に入れるので、お茶を飲みながら世間話をしたり、子供たちが遊ぶことができるんです。
この「大正さろん」はすぐ近くの大正大学の学生が中心となって、3年前にオープンしました。地元との交流を目的に、商店街の協力を得て、できあがった「街の交流拠点」です。現在も社会福祉学を専攻する大学院生たちが交互にスタッフとしてつめています。
中村愛美・情報キャスターが取材した日は、丹羽信誠さんが担当。そこに、近所に住んでいる女性が小学生のお子さんを連れて、現われました。 丹羽さんともすっかりおなじみのようで、話もはずんでいました。この女性は「お店でもないし、友達の家でもないし。人が入れ代わり立ち代わりするから、いい緊張感もあるし、どんな人が来るか、というのも楽しみです」と話します。
「大正さろん」では、例えば、お菓子をたくさん買っちゃったからミニパーティだとか、誰かの誕生日だったから、急遽お誕生会とか、毎日新しい交流が生まれているようです。
常連の方が言い出しっぺのことも多いようで、取材の時も立ち寄った女性がバレンタインデー直前であることに気づき、みんなに呼びかけて、数日後、「チョコレートフォンデュパーティ」の開催に至ったそうです。
丹羽さんは「ここにいるうちに、街に出てきた目的を忘れてしまい、あっもうこんな時間!!とあわてて帰られる方も多いんです」と話していました。もちろん、福祉の勉強にも役立てています。
また、「大正さろん」では火曜日に、不登校やひきこもりの子供や若者達のためのフリースペース「ぽれぽれ倶楽部」が行われています。さろんのオープンにも関わった「不登校・ひきこもり研究所」の天野敬子さんが「学校や職場に居場所が見つからない」人を応援しようと開いているものです。何をしても自由な空間ですが、他の人も自由に出入りできるので、中の様子は普段の日と全く変わりません。
ちょっと前まではよく来ていて、スタッフに色々相談もしていたという「ぽれぽれ倶楽部」の3人の女性に中村キャスターは話を聞きました。1人は「今まで周りにいなかったような大学生の人たちと交流できたりして、人と接する機会をここでたくさんもらった」と話し、もう1人は「すごい落ち込んで来れない時もあったんですけど、そういうことも気にしないで来れたということが、すごく良かったです」と話します。2人は、ふらっと立ち寄った学生さん達と一緒にボーリングしたのが、一番印象深い思い出だそうです。
また、ハロウィンの時、仮装して商店街を歩いて、とても楽しかったという1人は、「図書館行ってみたりとか、公園行ってみたりとかしても、相手をしてくれる人がいるわけではないので、きょうはさろんに行ったら、天野さんいるかな〜、いたら楽しいかな〜、くらいの気持ちでふらっと来てました」と話していました。3人ともいっぱい元気をもらったようです。
「大正さろん」にはもちろん、商店街の人もやってきます。庚申塚商栄会で寝具店を営む加瀬正二会長は、いつも、「大正さろん」にいる子供たちに積極的に声をかけるようにしているそうです。「あいさつが返ってくるようになると、とても嬉しい」という加瀬さんは「商店街にはこういう場所があってもいいと思うんです。昔は、床屋さんやお風呂屋さんに行っても、いろんな世代の人が集まって、話をする機会があったんだけど、それがなくなっているから、そういう場所になってくれれば」と話していました。
商店街と学生との交流も生まれています。イベントの手伝いだけでなく、企画の段階から学生が参加して、 色々案を出したこともあるそうです。「若い方たちが商店街を通るだけで、商売やってる人も意気込みが違ってくるんじゃないかな」と加瀬さんは話していました。
様々な人が集まる「大正さろん」。街作りの拠点に少しずつなってきているようです。