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柏で開かれたイベントに登場 |
日本の先住民族アイヌは、北海道だけでなく、関東地方にも少なくとも5千人はすんでいます。
千葉県柏市で10月、アイヌの踊りや歌のライブが行われました。
伝統楽器「ムックリ」の演奏で始まったステージに登場したのは首都圏在住のアイヌを中心とした若者達のグループ「アイヌ レブルズ(AINU REBELS)」。アイヌ文様の刺繍が入った民族衣装で、アイヌ伝統の踊りや歌を披露しました。
途中だんだんテンポは速くなり、ヒップホップ調やロック調にアレンジした歌や踊りも。
2人の女性が素敵な男性を奪い合う「色男の舞」では、突然沖縄民謡やロックギターが鳴り響き、お客さんもちょっとびっくりしていました。
会場は客席との距離がほとんどなく、最後はメンバーがお客さんの中に入り、輪になって、十勝地方に伝わる「バッタの踊り」。
それから、「お盆を投げて取り合い、落としたら負け」という、アイヌ語で「ヘクリサラリ」というゲーム。
取材した楠葉絵美・情報キャスターも加わりましたが、想像以上にハードで、クタクタ。でも楽しくて、終わった頃はすっかり皆さんいい汗をかいていました。
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川村さんも飛び入りで参加 |
この日のライブは「とうかつアイヌ民族友の会」が主催したもので、「アイヌ レブルズ」の前には、北海道旭川市に住む川村シンリツエオリパックアイヌさんが、アイヌの歴史や文化について講演しました。
終了後に感想を聞くと、ある女性は「バッタの踊りのいかにもバッタらしい様子とか、風に木が揺れる様子とか、水鳥の羽ばたいてる様子とか、見てて自然の中で生きてきた人達なのかなっていうのを感じました」と話していました。また、「若い人がロックなんかを入れていて、芸術というか、びっくりしたし、素晴らしかったです」と話す男性や「若いアイヌの人達が元気なのと、大事なことは守りながら、でもどんどん新しいものを取り入れている。そういう意味ですごく嬉しかったです」と話す女性もいました。
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中野の「チャランケ祭」に登場した「AINU REBELS」 |
「アイヌ レブルズ」が結成されたのは2006年。代表のMINA(酒井美直)さんが「自分達がやりたいって思うこと、格好良いなあ、すごいなあと思うことをやっていこう」と呼びかけました。メンバーのほとんどは就職や進学などで北海道から移ってきたのですが、結成当時、アイヌの踊りや歌ができるメンバーはわずかでした。この日あいさつに立ったMINAさんの話では「自分がアイヌであることを恥じていて、隠していた、嫌だったメンバーがほとんど」だそうです。
メンバーの一人、MEGUMIさんもアイヌということでいじめられ、北海道が嫌で関東に出てきました。でも今は仲間と一緒に踊りや歌を楽しんでいます。「仲間っていうか、私からすれば家族のような大切な人達です。アイヌ同士じゃないとわかりあえない部分ってあるんですよ。差別の目もあったり、偏見の目もあったり。言わなくても、あうんの呼吸というか、結構ツーツーの部分もあるんで。すごく楽しいステージを毎回重ねています」と話します。
MEGUMIさんはこの日、「イフンケ」という子守歌を歌いました。メグミさんのおばあさんが長年歌い続けていた歌だそうで、その「イフンケ」を自分で歌いたい、という念願をこの日のステージでかなえたんです。
また、「色男の舞」で色男をつとめたのはメンバー最年少、21歳のYAMATO君。関東で生まれ育ったYAMATO君は、東京でアイヌ料理の店をやっている親戚がいたり、自分のおばあさんの踊りや歌を自然に見聞きしていたので、「自分がアイヌ」ということを強く意識はしていなかったそうです。「踊りとか見てる方だったんで、やってみるのもいいかなあ、と思ったんです。ばあちゃんも、孫とやれるのは嬉しいんじゃないかと思いますし、やっぱり楽しいですから。何でも、楽しければいいんじゃないかな」と話していました。
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会場の公園にはDJブースも |
「楽しく」、そして「格好良く」アイヌの文化を発信し、「アイヌがアイヌであることを誇れるような社会に変えていきたい、アイヌ文化の風を起こして、社会の中に広げてゆきたい」という「アイヌ レブルズ」。ちょうど初ステージから1年目、11月4日に東京・中野で行われた「チャランケ祭り」にも出演し、2人のメンバー、ATUSHI君とTSUBASA君が自作のラップを披露しました。嫌な思い出なども含めて、自分がアイヌなんだという思いや決意がこめられたラップ。まだ未完成で、ちょっとためらったりもしたようですが、聞いて涙ぐむメンバーもいました。
「伝統にも学びながら、自分達がやりたいこと、格好良いと思うことを楽しくやっていこう」という「アイヌレブルズ」の思いは、柏でも中野でもしっかり伝わったと感じた楠葉キャスターでした。