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都庁本庁舎の南展望室で開かれた 「チャレンジド写真展」
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東京都庁本庁舎の展望室で、9月8日から11日まで、「こころを写す 写真の力 チャレンジド写真展」が開かれました。「チャレンジド」とは、病気や障害など様々な困難を抱えながらもチャレンジ=挑戦を続けて生きていこうという人たちのことです。
「チャレンジド写真展」に展示されているのは、病気や障害を持つ人たちが自分で撮った写真です。写真を撮ったり、撮った写真について語り合ったり、写真を加工して楽しんだり。そういう時間を通して、心も身体も元気になってもらおうという「写真療法=フォトセラピー」の活動の中で生まれた写真なんです。
例えば、長野県立こども病院に長期入院している子供たちが子供同士や病院のスタッフ、病院の中や外を撮った写真。「こども病院」でフォトセラピーの活動を行ってきた酒井貴子さんは「写真は、写す人が何か、これいいなあ、と感じるからシャッターを押すものですから、その方の気持ちや考え方が写りこむんです」と話します。そして、「とにかく自由に表現することが大事」だということです。「ピンボケでも、ぶれているのでも、全てその子の個性とか感性とか表現ですから、それを、ああここがいいねえ、ここがすてきだねえ、と褒めて認めることで、子供たちは自信をつけて、元気になっていくんです」と話します。子供たちには自分の言葉で、撮った時の気持ちを話してもらったりもするそうです。
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輝いて生きている姿が伝わってくる様々な写真が展示されました。 |
酒井さんは「こども病院」の他、病院の緩和ケア病棟、フリースクールなど様々な場所でフォトセラピーの活動を行ってきました。その一つ、東京・大田区の養護老人ホーム「池上長寿園」の皆さんが撮った写真も展示されました。そして写真と一緒に、「スクラップブッキングアルバム」も展示されたんです。平均年齢85歳ぐらいの方々に写真を撮ってもらっているんですが、撮ったらその場でプリントアウトして、色画用紙の上に貼り付けます。そして、周りに飾りのリボンやボタンを貼り付けたり、自分の気持ちを書いたりしてもらうんです。それが「スクラップブッキングアルバム」。撮った方の「心の世界」、「気持ち」がより良く伝わって来ました。
「最近は、小さなコンパクトデジカメが普及していますし、ホームプリンターをとても手軽に皆さん手に入れて楽しむことができます。とても重い障害や病気のある方でも手軽に自己表現をしたり、写真を撮りながら、他の人と会話を楽しんだりすることができます。写真というのはとても敷居の低い、手ごろな自己表現のツールだと思います」と酒井さんは話します。
都立城南養護学校の生徒さんの写真も展示されました。重度の障害のため、自宅で寝たきりの状態で、先生が通って教えているんですが、言葉ははっきり出て、指先も動かせます。先生やお母さん、酒井さんたちがカメラの前に行き、そこでシャッターを押したんです。「指一本動かせれば自分の表現ができるんですね」と酒井さんも話していました。
「チャレンジド写真展」で展示された写真はおよそ50枚。ほんとにこれが、がんや白血病とか命に関わるような病気と闘っている子供たちが撮った写真なのか、寝たきりのお子さんが撮ったような写真なのか、と驚くほど、力強くて、元気いっぱいな写真がいっぱいでした。
今回の「チャレンジド写真展」は東京都人権啓発センターの企画で、酒井さんが代表をつとめるNPO法人「日本写真療法家協会」の協力で開かれました。酒井さんのように、フォトセラピーの活動を個別に行ってきた方は各地にいますが、もっと色々な方に体験していただいたり、知っていただこうということで、写真療法家協会が生まれたんです。
協会では、今後も各地で写真展を開いていくということで、2007年内は福井と山口で予定されています。また、イギリスの病院でも展示されるなど、海外との交流も始まっているということです。