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プレーリヤカーを引いて、公園に向かう |
世田谷区内のあちこちの公園に最近、遊具を積んだ「リヤカー」を引いたお母さんたちが現れます。
90センチ×60センチの小さなリヤカーに積んでいるのはシャベルやスコップ、くまでに、バケツ、ざる、ボールなど。土や水で遊べるものです。それからダンボール素材の「黒板」も積んでいます。自由に落書きできるし、いくつかつなげるとトンネルや迷路にもなります。
これはNPO「冒険遊び場と子育て支援研究会」が、世田谷区の事業として行なっている「プレーリヤカー」という活動です。研究会では以前、区内の乳幼児がいる親を対象に公園の活用調査をしました。すると「公園には遊びに行きづらい」という声が多く寄せられたそうです。具体的には「もっと小さな遊具がほしい」とか「水や土に触れさせたい」という声です。
研究会の代表、矢郷恵子さんは「乳幼児が遊びやすい公園が、住宅地の中や近くにないんです。そういう公園はなんとなく一組の親子だけでぽつんときても遊びづらいんです。そこで、地域のお母さんたちと話し合って、公園をどんな風にしたら楽しくなるだろう、と色々アイデアを出し合いました。その一つがプレーリヤカーです」と話します。
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段ボール素材の「黒板」 |
山口智子リポーターが取材した日は、京王線下高井戸駅近くにある「弁天公園」にリヤカーが現れました。現れるのはだいたい家事が一段落する午前10時過ぎです。リヤカーは普段は公園近くの産婦人科病院に置ります。活動する日には車の通りを避けて裏道を歩き、公園に行きます。公園についたら掃除をして、遊び道具をセッティングします。この日リヤカーを引いて来た二人のお母さんはご自分も子育て中で、地元の「たまごとひよこ」という子育て支援グループに入っています。公園に来た子供を見守ったり、お母さん達同士の交流を手伝う「サポーター」の役割を果たしています。なんとなく入りづらい雰囲気の公園を入りやすくするんです。
セッティングがすむと、たまたま近くを通りかかった子供連れのお母さんたちが寄ってきました。大変暑い日だったので、お母さんは木陰で休憩。子供たちはバケツやひしゃくなどを使って砂場で水遊びに夢中になっていました。
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「冒険遊び場と子育て支援研究会」の矢郷さんにインタビュー |
お母さんたちに話を聞くと、「二人子供がいると、どうしても上の子まで目が行き届かないし、あんまり大きい公園に行くといなくなっちゃったりします。これだと、見てくださる方もいて、ありがたいです」とか「家だと遊び道具も限られちゃうので、いろいろあると子供も退屈しなくていいなあ、と思います」という声が返ってきました。子供達は子供同士、いろいろ新しい遊び方を見つけているようでした。
サポーターのお母さんたちにも話を聞いてみると、「大きい公園だと何人も遊びに来てますが、知らない人だと輪に入っていけないこともあります。こういう第三者がいると、知らない人同士遊ぶきっかけがすごく簡単になります」「何人かいればちょっと目を離していてもお母さんもほっと息がつけます。子供と1対1でつきあってないでいられる時間ってけっこう貴重です」ということでした。子供が勝手に遊んでいれば、子育てで煮詰ったりしているお母さん達もほっと一息、というわけです。
この日来ていたお母さん達は初めて会ったばかりだったんですが、サポーターの方たちと一緒に見守りながら、病院や幼稚園のことなど育児情報を交換し合っていました。
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リヤカーに積んだ遊具で水遊び
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「プレーリヤカー」の活動は去年始まったばかりで、まだリヤカーも2台しかないので、行ける公園も日時も限られています。「冒険遊び場と子育て支援研究会」の矢郷さんは、 今後リヤカーを増やし、協力するサポーターのお母さんも増やして、行ける公園を増やしたいと話していました。