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「ドクターマム・ナーサリースクール」の園内 |
東京・新宿区に去年、「女性医師の子どもだけを預かる」保育園がオープンしました。「ドクターマム・ナーサリースクール」という保育園です。
最近、医師の国家試験合格者の4割近くは女性が占めています。しかし育児と仕事が両立できず、医療の現場から離れる女性が多いのが現状です。「ドクターマム ナーサリースクール」の池田美智子園長は自分も医師として働きながら子育てをしてきましたが、「女性医師の問題は、今問題になっている医師不足の1つの要因になっている」と話します。そこで、後輩の女性医師がもっと力を発揮できるために、何か応援できないか、と考え、私財を投じて保育園を作ったんです。
この保育園は朝は7時から、夜は8時まで、とかなり長時間預かってくれます。患者さんの容体が急変したり、手術がなかなか終わらず、決まった時間に迎えに行けない時は夜10時まで延長できます。そして「病児保育」にも力を入れています。子どもはすぐ熱を出してしまうものですが、外来担当が決まっていたり、手術の予定が入っている場合もあります。そんな時も、軽い症状で全身の状態がよければ、預かってくれます。病児保育用の部屋があり、看護師もいつもいます。突発的なニーズに柔軟に応えようというわけです。
10ヶ月の娘さんを預けている、新宿区在住の皮膚科勤務のお母さんは「長時間預けられるし、病児保育があるので、安心して預けられます。あまり急患というのはないんですが、
週1くらい遅くなる日はあるので、そういう時はあらかじめ長い設定にして預けています」と話しています。
また、お二人とも医師で、都合のつく方が2歳の娘さんを迎えに来ているというご夫婦は
「この保育園は、医者の仕事に理解があるので、色々と融通をきかせてもらってます。ありがたいです」と話していました。
1年ちょっと前にオープンした「ドクターマム・ナーサリースクール」ですが、近くの大学病院に勤務する人を中心に、少しずつ利用者は増えています。ビルの2階にあるんですが、広々としたチャイルドルームに滑り台などの遊具が備え付けられていて、汗をかいた時のためにシャワールームも完備されています。中村愛美・情報キャスターが 取材した日も、遊んだり、夕食を食べたり、楽しそうな笑い声が響きわたっていました。途中で幼稚園に変えなくてもいいように、幼児教育に力を入れているのも、こちらの特徴だそうです。
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取材に訪れた中村愛美キャスター |
ただ保育園が充実していても、それだけでは、女性医師は働き続けられません。職場の理解や支援も必要です。育児休暇の制度などはあっても、医師として働きつづけたい場合、あまり長い期間は休めないという事情もあるようです。
1歳2ヶ月の娘さんを預けているという外科勤務の新宿区在住のお母さんは、産後2ヶ月で職場に復帰したそうです。「遅刻と早退は大目に見てくれたし、泊まりの当直、勤務についても配慮をしてもらったので、なんとかやってきましたが、子供が産める時期の医師というのは、いろんな資格をとったり、研修期間だったり、症例をいっぱい稼がなきゃいけない時期だったので、1年は休めないです」と話していました。
医師として色々吸収しなくてはいけない時期と、出産、育児の年代が重なってしまうんです。「ドクターマム ナーサリースクール」の池田美智子園長も「子どもを預かって、はい行きなさい!って言っても、行く先が理解を示してくれない職場であれば、もう駄目だなって辞めてしまいます。ようやく、一人前になった医者が全然貢献しないんじゃ、社会的資源の無駄遣いになるわけで、そういう環境を作っていくということが社会の勤めだと思います」と話します。働きやすい職場と保育園、両方が必要なんです。
話を聞いたお母さんたちの職場のように、子育て中の女性医師に、短時間勤務や、当直免除などを導入している病院も少しずつ増えてきています。また、フレックスタイムや、二人で1人分の業務を行なうワークシェアリングを導入している病院もあるそうです。
育児で、1度完全に医療現場から離れた女性の研修コースを設けた大学病院もあります。医師として仕事を再開するのを後押ししようというわけです。
それから、パートタイムなど働く条件の希望にあった再就職先を紹介する 「女性医師バンク」も日本医師会に最近設けられました。
「医師不足」は、社会全体にとっても非常に大事な問題です。「女性医師の働きやすい環境作りは社会全体で考えなくてはいけない」と思った中村キャスターでした。